投稿日: Jul 17, 2013 1:9:2 AM
取り組みがズレていると思う方へ
東関東大震災3.11の直後にガイガーカウンタを買って、しばらくの間は家の近所を測ってみた。またガイガーカウンタも作ってみた。制作は簡単で、何千円かのガイガー・ミュラー管というのさえ手に入れれば、廃物利用で使い捨てカメラのフラッシュライトとか液晶ディスプレイの冷陰極管などのための高圧発生モジュールを使って実験できる。入手したガイガー・ミュラー管の特性に合わせて高電圧の調整をするための電子回路知識は必要になる。原理はガイガー・ミュラー管に高圧をかけて放電開始するよりもちょっと低い状態にしておくと、外部から放射線が入ると一瞬だけ電流が流れて、それがガリガリいう音として認識したり、ガリガリの数として数えるというものである。
またPINフォトダイオードが手に入れば高圧回路は不要で、直接γ線を検出してアンプで増幅するような方法もある。新規に買うならこの方が簡便かもしれない。
こういうことをやってみると測定することの限界というのがよくわかる。ガイガー・ミュラー管の場合は放射線を取り入れる口径が大きいほうが沢山入るわけだし、入ってくる放射線の種類はそのままでは判別できないので、入り口にマイカ板をつけてフィルタリングするなど、ガイガー・ミュラー管を使った計器にもいろいろな種類がある。だから測った値だけ取り出して数値を比べて云々はできない。
では自作したものや安物は何の役に立つのかという疑問があろう。私が買ったのはチェルノブイリ後の被災に備えながら住む人の向けのもので、他人が測った値と比較するためではなく、雨が降ったりし強風が吹いたあとで自分の行動範囲の中で変化が起きていないかどうかを調べるもので、線量が上昇しているとなると要注意であることを知るためである。というようなことが説明書に書かれていた(エストニア製英語解説付)。いわゆる除染が必要な場所を発見するためである。
もうひとつ注意すべきことは、測り方によって結果はどのようにもなることである。一番は近づける距離であるが、地面を全面スキャンするわけにはいかないのだから、たまたま自分が測った場所から放射線が出ていたかどうかがわかるだけで、そのちょっと横からは放射線が出ていたかもしれない。要するに微量のものはわからないのだが、これは測って値が無かったからといって、そのあたりが放射線ゼロとはいえないことでもある。
当然除染が必要な高濃度のところは判別できるが、そのあたり一体に総量としてどれほどの放射性物質があるかはわからない。これらは検出不可能なほど微量であっても、容易に無くならないという点では常時接していると時間の係数で人体には影響を受けるので問題である。
この線量と時間の係数という点が一般にはなかなか認識され難いようである。むしろ最近の報道姿勢をみていると、地面を測って無ければ安心と言いう論調が増えているように思えるが、これは全く逆で計測器で一発では直接測れないところに目を向けなければならない。それは時間とともに濃縮されるような観測点が多くあるからで、海底・湖底などから、生物・植物への影響が目安になる。
こういう分野は安心どころか、東関東の水系からくる水源地とか、落ち葉を食べる昆虫とか、それらを食べる鳥とか、動物とかを測ると、福島の原発の周辺のかなりの地域に放射性物質が蓄積されてきたことが判明しつつある。だからそれらのデータを元に、再度どこに住めば安全なのかという判定を行うべき時である。
昔、日本列島の各地で「公害」といわれる因果関係のつかみ難い健康被害が多発していた時期があったし、今でもどこかであるだろう。この時の教訓として、単純に測って因果関係が認められないという判断が、如何に問題を長引かせ、こじらせ、被害を拡大してきたかということだと思ったのだが、今の放射能問題も全く同じようになりつつあるように思える。