投稿日: Jun 26, 2013 12:46:40 AM
サービスが異質だと思う方へ
CDが世界的に売れなくなっているという。日本ではカセット音楽はそれほどブレイクしなかったが、世界的にはLPの売上ピークが1980年頃にあり、カセットのピークが1990年頃、CDのピークが2000年頃という10年周期の入れ替わりがあって前世紀は右肩上がりに伸び続けた。そして21世紀に入ってデジタルのコンテンツ流通が盛んになり、すべてのパッケージ媒体が右肩下がりに転じ、今のCDはカセットのピークを下回り、ちょうどLPのピークくらいになった。しかしこのくらいがひょっとするとちょうど良いのかもしれない。今までが売りすぎていたのではないだろうかと思う。
紙の本も飽和した後に電子書籍が伸びるのもパッケージ媒体からデジタルのコンテンツ流通革命に至る経緯であろう。だから紙の本の流通モデルをベースには流通革命はできないので、Amazonのように流通側が主導をとるビジネス分野になるということだろう。流通業者は需要と供給のバランスの上にビジネスを考えるので、新たなコンテンツ作りが必ずしも必要なわけではない。音楽で言うとiTuneが新譜を発表しているのではないように、コンテンツを世に送り出す音楽産業や出版社はブランド力を薄めて次第に影の存在になる。
代わってネット上の使いやすいコンテンツ流通サービスの開発競争が起こって、いろいろな工夫がされている。いずれにせよコンテンツはデジタル流通が主になってパッケージが従になる日がくるだろう。それに備えた業態の転換を考えておかなければならないが、デジタル流通は在庫をもつパッケージのビジネスとは根本的に異なり、コンテンツが累積する一方の図書館のようなサービスになるので、なかなかはアタマがついていかない。今のところこの累積ということを念頭に置いていると思われるサービスはまだない。図書館を敵視する人もいるようだが、今はむしろ図書館から学ばなければならないところが多いのではないかと思う。
CDが売れなくなった理由の一つは、買いすぎて家庭内音楽在庫が増えすぎたためであることを以前に書いたことがある。これはCDをケースから取り出してかけたり外したりするのが面倒なことから、個人のコレクションが数百とかある一定数を超えるとCDの利用率がうんと下がってしまって、なるべく買わない方向になるからであろう。簡単に音楽が聴けるデジタル音楽がこの家庭内在庫問題を突破できたように、電子書籍も書棚スペース問題を突破できるのだが、やはりその先は個人の読者の管理上限というのにブチあたって、飽和する時がくる。
サービス提供側のコンテンツ累積と、利用者側のコンテンツ累積という双方の課題にチャレンジするのが今後のコンテンツビジネスであろう。もっとも単純な解はインターネットラジオのように垂れ流しサービスで、そこから始めるべきだが日本では制約が多くてできにくい。電子書籍も漫画喫茶の進化とか、オススメで絞り込んだなかから読み放題のような形がベースになっていくのではないかと思う。