投稿日: Aug 24, 2011 10:22:43 PM
ガラケーの甘い汁がなくなると思う方へ
8月24日に急速なユーザ数拡大が続くAndroidスマートフォンに向けたアプリの制作に必要な、制作の留意点・工夫・挑戦する背景・市場規模感を知る『Androidアプリ制作の現状を学び、今後の可能性を探る』 セミナーを行った(スライドショーあり)。Androidのスマホはどういう位置にあるのか、制作環境はどのように変わってきたのか、ガラケー市場との関連はどうなるのか、開発企業の戦略の立て方、といった異なる視点で、この間モバイルの企画・開発・制作に携わってこられたプロの方々が話し合った。
株式会社ANALOG TWELVEの内山英俊氏は、Androidがマッシュアップに向いていることから、細切れのアプリやソフトに閉じこもらないで、サービスとして魅力的になるようにいろんなマッシュアップを組み合わせて利用プロセスをつないでいくことを提唱し、Android Application Award 2010 Spring 優秀賞受賞作品『待ちぴったん』を紹介した。GPSを使い、2人の居場所から待ち合わせ場所を決めるアプリであるが、シナリオとしては男女間で待ち合わせが誘いやすいという明確なコンセプトがあるところが強い。ケータイコンテンツは誰でもできる時代から、マーケティングが重要な時代を経て、これからは、速く安く作る、安く客を集める、継続的な収益、というビジネス視点を考えるべきという話だった。いろんなマッシュアップをしながらベースアプリにひきつけるのが重要である。
アシアル株式会社の田中正裕氏は、ケータイ向けサーバーサイドの受託開発をしてきた経験から、コンテンツ・アプリの生成の視点での課題と方向性を語った。通信量が多く常時接続のスマホやタブレットはPC寄りのデバイスであり、これからさらに能力が高まるので、PC、タブレット、スマホは共存関係になり、コンテンツはクロスプラットホーム戦略をならざるを得ない。もっとも汎用性が高いのがWebブラウザであるが、これを開いて使うのではpush、同期、アプリマーケでの販売などができないので限界がある。かといってアプリで作りこんでいては高いスキル、開発期間の長期化、移植など高コストになる。そこでコンテンツはHTMLで作っておいてアプリの中に組み込むことでブラウザを越え、アプリとして売ることもできる。こういった制作と運営をクラウド上で行えるフレームワークを開発している。
テックファーム株式会社の遠藤徳之氏は、現状のスマホコンテンツ市場100億円に対して有料コンテンツ市場が2700億円もあるiモード市場をdocomoが、2011年冬からAndroid上に移行させると発表したことを受けて、それらがどのようにAndroid上で引き継がれるのかを考察した。移行のツールや支援はキャリアも行うが、ガラケーのコンテンツそのままでスマホに通用するかどうかが問題である。結局は内容によってスマホでどのように提供するかが変わる。ゲームやGPS・おさいふなどデバイスの機能に依存したiアプリはAndroid上でもネイティブアプリになる。電子書籍リーダーはプラットホーム型アプリのベンダーにコンテンツを渡して配信までしてもらうことになる。まちうけ・きせかえなどはAndroidネイティブのホームアプリになり、メーカーもそれらを組み込んで売る。配布が自由で選択肢が多いのがWebアプリで、これはキャリヤやデバイスの影響も受けないし、検索エンジンからの動線もつくれる。機能の制約はあるがHTML5による可能性拡大も見込める。こういった移行は一挙にはならないので、コンテンツ・アプリの空白時期が起こるから、そこに参入のチャンスが来るととらえている。
メディアキュート株式会社の竹川博之氏は、ガラケーアプリ開発の会社であったのが、2010年ころから案件が劇的に変化してAndroid開発の専業者に変身したいきさつを話した。端末もひとつのキャリアが20機種もAndroidを出すようになっている。またソーシャルと連携できないかというような新機軸提案が増えている。GoogleのAndroid開発のテンポは速くメジャーなバージョンアップが年2回あるなどに対応するためであった。Android最新機種でガラケー機能はだいたい載ってきたので、ガラケーでできていた動線をAndroidでも再現する必要があるが、中にはすぐに対応できないものもある。例えばトップ画面はロックされていて時計になっているので、その上に最上位画面のアプリを追加して、まちうけ・ニュース・広告・着信案内などが可能になるような開発をしている。また紙を画面に出す電子書籍とは異なる、新しい体験ができるものをHTMLと得意分野の動画を組み合わせて、フリーペーパーとして美容院向けに開発した。
今回のパネラーはケータイ以降の開発者がAndroidで飛躍しようとしている例であり、やはりPC時代とは顔ぶれが変わるものだなあと思わされた。ケータイで10何年かけてできた既成概念が崩されようとしていることがAndroidの急進でわかる。IT業界全体を見ると沈滞している日本ではあるが、尖がっているところは既成概念にとらわれず前進していることは頼もしい。