投稿日: Jan 25, 2013 1:6:20 AM
視点を変える必要があると思う方へ
通販が日本で市民権を得たのはそんなに古いことではなく、媒体の信用力としてはパンフレットなどではダメだったので、TVで宣伝することと、宅配便の発達が大きく寄与したと思う。それまでは千趣会のような口コミの頒布方式が日本では発達していて、通販は怪しい目で見られていた。だから婦人雑誌などのブランド力がないと通販は行えなかった。つまりアメリカのようなカタログオンリーの通販よりは、最初からメディアミックスで発達したように思える。これはモノつくり至上主義のビジネスとは対極のアプローチに思える。
モノつくり至上主義は「良いものさえ作れば必ず売れる」という提供側の一方的な思い入れに基づいた考えで、それは一面の真実なのだが大変な忍耐が必要で、たいていは次の決算までには結果は出ない。良いものを売るのは全ビジネスの基本で、通販であっても評価を得ないと次が売れないから、商品は吟味されるものである。しかしこれだけやればいいのではなく、良さをわかってもらうことが重要である。それは美辞麗句の宣伝文句を並べることではなく、今日では購買者のレビューとか口コミとかアフィリエイトとか、第三者のフィードバックを公にすることでなされるので、SNS対策が重要になる。
もうひとつは、商品そのものだけが満足をもたらすのではなく、商品を提供するサービスが満足をもたらす点だ。アスクルの通販でもAmazonでも注文したその日に届けられると、書店で本の取り寄せをするのがバカバカしく思える。これは製造元の倉庫→流通倉庫→出荷作業などの全体を通した物品の管理を最適化することで、技術的にはサプライチェーン問題であるが、そのパフォーマンスを上げればビジネスが促進するというサービス指向が伴わないと実現しない。つまりAmazonはサービス指向の立場が先にあって、サプライチェーンも、バリューチェーンも進化させてきたのである。
記事『Book On Demand の復活』ではプリントオンデマンドによる本作りにはまだ可能性があることを書いたが、これもモノ作りの視点でやってきたことから転換するところが課題であろう。つまりどこにデジタル印刷と製本の設備を置くのかである。従来のオフセット印刷のように印刷会社の工場の中に置いたのでは、出荷作業に適するかどうかは怪しい。印刷会社が宅配業者に手渡すところまでサービスするならそれも可能だろう。しかし宅配業者のそばでトラックの出入りのタイミングに合わせて印刷・製本するのが最もサプライチェーン的にはよいはずである。こうでもしないと在庫ゼロにはもっていき難いだろう。
また印刷や製本の仕様が、従来の印刷本と同じように多様であるとオンデマンドはコスト高になるので、写真のDPEがサービスサイズに統一することで普及したように、本のサイズも数種類に絞る必要がある。これはモノつくり的こだわりからすると承服し難いだろうから、本を早く手に入れて読みたいというニーズに応えようというサービス指向にならないと進められない気がする。オンデマンドのビジネスはちょうどファーストフードのようなものだといえるかもしれない。