投稿日: Feb 09, 2011 11:20:10 PM
グローバルな発想を身につけたい方へ
電子書籍が話題とはいっても20年ほど同じ所をグルグル回っていたのに、AmazonのKindleなどはそういう状態を突破したことを、記事『まずは大きなビジョンを』では書いた。残念ながらグローバル化が英語化を意味するような面もあって、英語圏のメディアは世界に広がることができる。他方アルジャジーラでも英語放送をするように、英語に乗って世界に情報発信することも増えている。では日本の出版物は? 一部の著名作家を除いてはほとんど未着手といってもいいのではないだろうか。日本で「翻訳」というと圧倒的に外国語を日本語にする場合が多いが、これからは日本語から外国語に翻訳する方がビジネス機会が増えるだろう。オスマンサンコンさんは日本に来る前はアフリカと同じような社会だと思っていたという。近年までチョンマゲやゲイシャの絵が子供向け教科書に載っていたらしい。それは極端であるとしても、日本は自己紹介すら十分にできないままグローバル時代を迎えたともいえる。
今電子書籍があちこちから出ているが、一流の出版社でも国内の紙のコンテンツの2番煎じで、タイミングでいえば古本・古雑誌として資源ゴミとして束ねられそうなコンテンツを、ピカピカのiPhone・iPadに載せるようなことをしている。しかも、あれが見たいと思って検索すれば見つかるかというと、検索エンジンに対応していなかったり、そもそも極一部のコンテンツしか電子化していなくて、探す気もなくなってしまう。緊急を要しない情報なら本屋に行ったついでに探せばよいので、紙の本で十分だ。紙の情報を再利用しているという点では、今の電子書籍は10年以上前のWebの段階であって、ビジネスになりにくいのは明らかだ。
では紙にもWebにも無い情報を電子書籍化して、よく売れるか? そんな売れるコンテンツが手付かずで残っているのか? アメリカの電子書籍はユビキタス化で、いつでもどこでも安く手に入るということで紙の本の需要の隙間を埋め、さらに世界に売れるようになった。日本では前者は可能でも後者はそのままでは実現しない。おそらく日本のコンテンツを世界に出すとしても、日本でCNNニュースを見る人が一般化しないのと同じで、日本と同じものではなく、TVで言えば中学生ニュースくらいに要約したものが求められるだろう。つまり軌道に乗り出した欧米の電子書籍に相乗りするという動きがもっとあってもいいのではないかと思う。
その先は、日本の著者や編集者が世界に出て行って仕事をすることである。著者なら翻訳者と手を組んで最初から日本語を英語で電子出版するとか、編集者も翻訳者と手を組んで最初からKindleで出すことも可能になる。だいたい翻訳者自身も自分を海外の出版社に売り込んで、日本の出版社から仕事をもらうのではなく、海外の版元に日本語電子書籍を出させることも可能になるはずだ。Kindleから直接に日本語コンテンツを買うようになるかもしれない。記事『まずは大きなビジョンを』では今までのビジネス環境を白紙に戻して考えるべきことを書いたが、目を開けば文化の壁が変わっているというとんでもない時代を迎えていることがわかるだろう。