投稿日: Aug 05, 2014 1:33:45 AM
巷でもARのアプリが見受けられるが、この言葉がスマホの応用として広がるとともに、元々のバーチャルリアリティ的なアプリが姿を消して、単なる画像からどこかへのリンクになりつつある。それはそれでQRコードのような縛りから抜け出せるという意味では進歩である。まだ標準化はされていないので、ビュアがそれぞれ個別のアプリとしてダウンロードして使うことになる。そのうちバーコードなどのようにメーカーが異なっても読みとれるように画像解析機能の標準化というのが必要かもしれない。しかししばらくの間はビュアとサーバがセットのクローズドなシステムであろう。
10数年前の昔、ARは拡張現実感とかいわれ、目の前の現実のシーンにバーチャルリアリティを重ねて表示する技術であった。ミックスドリアリティとも呼ばれた。その名残として町の光景にスマホのカメラをかざすと、文字情報が重ねて表示されるとかキャラクタが動き出すというARがある。しかしこういう応用を考え出して、しかもお金の取れるようなものを提案することは非常に難しい。アプリの技術開発というビジネスはあり得ても、他は長い間ゲームくらいしか考え付かなったのである。
ARは独立したアプリとしての道を進まず、部屋の空間に家具をオーバーレイするような表示技術の一角に居座るようになったのだろう。具体的に言えばスマホなどが使われている位置情報や空間認識を使って現実には見えないものを見せるようなロケーションベースのものは増えずに、画像認識によって何かアクションを起こすマーカー型が増えている。これは「現物」ではなく看板や印刷物などにある2次元画像をマーカーに使うので、あらかじめマーカーの設定をしておかなければならない。マーカー登録の操作自身は容易でも、不特定多数の類似マーカーに一つの情報を紐づけることは難しい。これとかマーカーレスのARはまだ課題がある。
結局マーカー登録をするという点ではQRコードと使い方はあまり変わりがないのだが、自由な画像が使える分だけ紙面デザイン上は有利になる。しかしそこからECサイトに飛んでいくような場合でない限り利用料金をもらえるような用途はなかなか見つからない。
現実にはECなどの販促用途以外は、製作費の中からAR費用を捻出するしかないだろう。よく印刷物にスマホをかざすと動画が現れるという事例があるが、印刷物を作る費用にARの諸費用を上乗せできるだろうか?もし動画に意味があるならば最初から紙の印刷物はやめにして、WEBサイトに動画を貼れば済む話である。例えば映画の予告編などはWebで案内した方がよいので、印刷物から動画へ誘導する用途は動画の側から見れば副次的なものとなるだろう。
ARの操作がとっつき難いことはないので、マーカー型でも応用は広がると思うが、その際にビジネスとなる点はやはり企画力だろう。紙面でも画面でもあらかじめ見えているものと、マーカーにスマホをかざさないと見えないものの区別をどうするかということでもある。キャッチーな画像があれば最初から表示したくなるわけで、メディア制作においては何かをわざわざ奥に隠しておいて見てもらうというのは、かなり難易度が高い。
むしろ看板やショウウィンドウのようなメディアでないものをマーカーにしたものの方が、スマホをかざしていろいろな情報が出てくる面白さがあるのかもしれない。
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