投稿日: May 17, 2011 12:11:51 AM
パーソナライズを考えている方へ
eBayのリコメンドが10年かけて優れたものになったことを記事『eBusinessの王道』で書いた。よくレシートにオススメをプリントしたり、郵送する利用明細書に広告をつけたり、またデジタルサイネージでも、その状況に合わせて広告をダイナミックかつ自動的に切り替えていく考えは、デジタルメディアと共に広まっているが、「効果」を測定するのは難しい。広告というのは表示や印刷紙面をどうするかという、利用者との接点のところから考えがちであるが、広告の効果は利用者の意識とか認識とのマッチングの問題なので、必ずしも表現とか見てくれではなく、利用者のコンテキストにはまったオファーができるかどうかである。膨大な購買データを扱ったeBayでも10年かかったわけなので、例えば何かのキャンペーンでOneToOneをやった経験程度ではマッチングがうまくできるわけはない。
つまりコンテキストのマッチングを狙うマーケティングをするには、プリントやディスプレイに課題があるのではなく、日常のビジネスの中でどれだけ利用者側の情報を拾うかが課題である。これが最も進んでいるのが、対面販売をしない通信販売であって、いろいろな推論を行うことがビジネスの肝となっている。OneToOneのシステムを提案とか開発する人は、まずは通販会社に採用されるようなものを考えるといいだろうが、なかなか要求は厳しいと思う。こうすれば売れるというようなノウハウはあるわけがないはずだからだ。
システムを提供する側は利用者の情報といってもCRM程度のことしか考えていない場合が多いが、店舗でも通販でも利用者情報はもっとダイナミックなもので、回転すしなら曜日・時間帯・何人連れ・その人々の関係(家族、カップル、年齢帯…)などを入店前に判定して需要予測をたてているように、ものすごく現場に入り込んだ精度の高いものが求められていて、対応できるシステムベンダーは限られる。こういったダイナミックさや緻密さがソーシャルメディアの解析によるマーケティングにも求められようとしている。今はエリアとか簡単な属性や関係しか扱えないのだろうが、すでに書き込みの自然言語解析をしてセンチメントのグループ化を試みているところはある。
冒頭のeBayのリコメンドも単純な購買履歴から行うのではなく、それらから別の仮説データベースを構築して参照していると考えられる。例えば私が買うレコードに関してはアーチストや音楽ジャンルというだけではなく、いつ頃のものか、地域・状態・レア度・一般的な評価など、元の商品データにはない情報を扱っているらしく、私の「超有名人は買わない」という購買履歴にはないこともリコメンドに反映していて、リコメンドアイテムの中に不要な商品が少なくなるようになっている。
結局サービスというのは、顕在化しているデータからだけでは不十分なものしかできず、相手を思いやる想像力までも求められるし、そのレベルの情報処理が始まりつつある時代だと思う。