投稿日: Feb 16, 2011 10:4:3 PM
著作権で人の足を引張っていると思う方へ
年末から1月にかけて、私的録画補償金訴訟では東芝の協力義務に法的強制力なしになり、「まねきTV」は著作権侵害に、HDDレコーダー「ロクラクII」レンタルサービスは放送番組の複製権侵害の二審判決が破棄されるなど、一貫性のない判決が出ていることが中村伊知哉さんのBlogに書いてあった。しかも著作権の専門家である知財高裁の判決を最高裁がひっくり返すようになると、このことを全うに考察するところは無いのか、と思わざるを得ない。ビジネスの観点からすると著作権ではなく他の法律を使って自分のビジネスを守る方法はあるものの、著作権は他社のメディアビジネスに横槍を入れる格好の機会として使えるものとなっている。
記事『ソーシャル世代のキラーコンテンツ』では、電子書籍の乱立やTVも3桁の何百チャンネルはカオスに陥っていることや、こうなったのはどこにどう問題があるのかを当事者は分かっていないことを書いた。これらも著作権からみの問題を含んでいるので、ビジネスとしては横槍が入り込みやすい脆さを抱えている。著作権は守るも攻めるもという2面を持っているわけだが、そこに依拠せずにもっとしっかりした土台に自分のビジネスを据えなければならないだろう。逆に言えば、著作権を振り回している人が分かっていないことは何かをしっかり考えよう。
上記の訴訟でも複製権が云々ということが多いが、デジタルのネットワークはそもそもデータを複製するものなので、デジタルネットを使う以上、すべてのことがこれに抵触する。これは手紙を送ることは情報の移動であるのに対して、電子メールを送っても手元には原文が残るように元データの移動はなく、先方のマシン・デバイスに自動的に複製されるからである。Webサーバでもサーバのデータを利用者のデバイスに複製しているのであって、デジタルネットはコピー機や印刷機と同じなのである。このことを棚上げにしてアプリケーションや運用レベルで複製に当たるとか当たらないということを議論しているのが現状に思える。
つまりデジタルデータは複製されながら扱われることを前提に考えなければならないので、複製自体に善悪は無く、許諾を得ているかいないかとか、争点を著作権以外の他の一般通念で判断できるものに置き換えるやり方にしなければならないだろう。フォントの意匠は著作権が認められていないが、不正競争防止法などでコピー商品を防いでいるのと似ている。デジタルがもたらす複製は情報価値を社会に広めるもので、社会にとってはプラスになる。そこに貢献する仕事にリターンがあればよいのである。そのように著作権をアテにしないで視点を変えてメディア事業を考えるべきである。