投稿日: Feb 13, 2016 1:16:14 AM
楽天はカナダの電子書籍会社Koboを2011年に約236億円で買収したが、それでKindleの市場を奪っていったようには見えない。いったいどのような事業戦略があるのだろうか? 2016年にはkobo以外の関係会社株式も含めて623億円の関係会社株式評価損を個別決算に計上している。次々と買収した海外子会社ののれんの価値が下がっていったのである。どうも1980年代末のバブル期にアメリカの一等地の不動産を取得して値下がりしてから売却した日本の金融機関などのことを連想してしまう。
海外の子会社をこき使って世界市場で稼がせることは難しいこととは思うが、そういう目的がなければ海外子会社など持つ必要はない。だいたい楽天が社内コミュニケーションを英語にするとかいっていたのは、世界でのビジネスを広げていくつもりだからなのではないか。しかし現実は国内で稼いだ分を世界にばら撒いているという状態である。世界的な企業としては管理能力が問われるような状態なので、何のための社内英語だったのかと思う。三木谷さんは表に出て説明はしないのか?
Koboに関しては日本から電子書籍に携わった人を役員として送り込んでいるが、おそらく電子出版に関する知見では現地の人たちに歯が絶たないであろう。1980年代からIEPRCという国際電子出版調査委員会と付き合っていて、国際会議に出たり、また日本に調査団が来たりしてつきあったことがあるが、ヨーロッパの出版文化人というのはフツーのビジネスマンとは違って、相当哲学的な人たちでもあり、日本なら文科系の大学教授くらいの貫録はあった。そういう連中を束ねて新たなビジネスをするには英語や銭勘定だけ長けているだけの人では役不足だろう。
電子出版でなくてもビジネスの裏にはそれぞれの文化があって、国際的にちょっとづつずれた文化をまとめて取り扱うには、個別文化から抜け出したメタな思考とかセンスが必要になる。その真逆が日本のサブカルのような蛸壺文化である。これも当座は突飛なファッションショーのような刺激を与えるので話題にはなるが、ビジネスとして世界に大きく育てるには一皮むけてメタな取り組みが必要になるだろう。
昨日テレビで手塚治虫のことをやっていたが、もし手塚先生が生きていたら日本の漫画もまた別の道が与えられたかもしれないという気がした。それは手塚先生の世界観人生観というような次元のことで、サブカルのクリエータにも何らか影響したはずだと思った。漫画も古典を原作にするなどサブカル以外の作り方もあるが、そういうことで練られていくともっと足腰の強いコンテンツになるのかもしれない。日本の漫画の歴史を考えるとまだ数十年なので、これからが勝負なのだろうし、それらを経済化する出版界にとっても世界市場への挑戦という点ではこれから始まるともいえる。
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