投稿日: Mar 03, 2016 12:39:55 AM
企業が生活者に向き合っていない傾向が強い日本であるが、官公庁自治体および外郭団体に至っては生活者に背を向けているのではないかと思ってしまうことがある。大義名分としては国民のためのサービスをしていると言いながら、利用する国民のことよりも役所の都合を前面に出して、自己弁護とか制約を並べ立てたサービスをしていることがある。結局のところあまり利用されないで税金の無駄使いになりがちである。
自治体に児童相談センターを置いて児童虐待の通報などを24時間受けつける全国共通ダイヤル番号「189」が昨年開設された。189とは「いちはやく」からきているとのことだが、電話をかけると児童相談所につながる前に2分ほど音声ガイダンスが延々としゃべりだし、神奈川県の調査では7割の人がその間に電話を切ってしまっているという(記事)。私はこのガイダンスを聞いたことは無いが厚生労働省が作成したものだろう。特に携帯電話からは郵便番号の入力を求められ、場所の特定をするためのガイダンスが長いらしい。
民間企業でも自動音声応答は多用されているが、大抵はオペレータが出てくるよりもさっさと片付くようになっている。郵便の再配達なども毎年のように少しづつ改善されてきた。しかしそれでもヤマトの再配達の方が簡単操作である。だから技術的には音声の案内や応答システムはそれほど問題は無いと思われるが、問題はサービスの設計思想なのであろう。つまり使いにくいシステムを提供している役所は、業務を満たす仕様は作ったとしてもユーザーフレンドリーな思想に欠けているということだ。
以上から判ることは、役人は189番で「いち早く」っていいね!くらいの語呂合わせで満足して、そこ思考が止まってしまって、その先にこれがどのくらい利用されるかというような議論や目標設定の真剣な話し合いはしていなかったということだ。もし電話をかけてくる人のビヘイビァを観察していたら、遠の昔にガイダンスは作り直していたであろう。しかもそこにかかる経費もたいしたものではないはずだ。そうすると改善しないのは怠慢でしかないし、改善に特殊な専門性もいらないだろう。
役所が「使い勝手のよさ」も仕様に含めて発注すれば済むことをやらなかったのは、思想的な欠落があったと言わざるを得ない。
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