投稿日: Apr 14, 2014 1:16:30 AM
ネットは理解の助けになっているのか
知恵の輪のようなパズルとか手品というのは、一見出来そうもないことができてしまうことに面白さがあるが、現実の生活の中でもそういうことが発明魂とかベンチャースピリットを刺激する。イノベーションというのも過去の常識ではありえないような解を示すところに興る。
ところが過去の常識では考えられないようなものは、一般の人には理解しがたく、大衆的な話題にはならない。大衆が驚いたり称賛するのは、そのイノベーションが社会に十分ゆきわたってからからであり、ニュースで事例として取り上げられるようになったなら、それはもうイノベーションではなく、これから別のイノベーションに取って代られる標的になりつつあるものだといってもよい。
こういうニュースネタを見分けたり振り分けるセンスというのは、紙の時代には専門誌とかに集約していて、割と調べやすかったのだが、ネットの時代になるとweb上に信頼できる専門誌というのを見つけることが困難になっている。紙の雑誌では人から借りたり、コピーをもらったり、図書館や図書室、人の研究室に置いてあったり、人目に触れることが多かったものでも、ネットになって有料の会員登録制とかになると、ほぼ完全クローズになってしまって、本当に「知っている人しか知らない」世界になりがちだ。
当然多くのWeb上の出版もあり、検索エンジンで概略の記事くらいは引っかかるようになってはいるが、検索エンジンはゴミ記事を山のように連れてくるので、より分けるのが大変になる。はっきりいってそんなことに時間や労力を費やしたくない。
Webではさらに悪いことに、ニセ科学とか内容を理解していない人が引用・編集した記事が非常に多く、特にイノベーションに関してはガセネタが蔓延している。それは冒頭のニュースネタとしてマスコミが世の中にバラ撒くよりも先に、blogやSNSなどで興味をそそるネタが拡散してしまうからである。
人々は知らず知らずの間に拡散したガセネタを摺り込まれてしまっていて始末が悪いことがある。それはマスコミがマスゴミと揶揄されている反動としてなのか、まだマスコミには乗らないネットのガセの方を信じがちになるからだ。
人が魔術のような「新技術」に飛びつく傾向があるのはわかるが、そういうネタを契機に自分たちが信じてきた過去の常識を点検する方向で発想する方がよいと思う。
若手研究者O某の方に関する話題でも、元はといえばノーベル賞になった細胞の初期化・万能化という、過去の常識をひっくり返して見せたものが発端になって騒がれた。それが捏造かどうかは門外漢にはわからないが、過去の生物学の常識がどう変わろうとしているのかという理解が最初に必要ではないかと思う。
発明や発見の初期に勘違いがあることはよくあるが、さらに突き詰めていけば別のゴールにたどり着くこともある。一つ一つの間違いや誤解の先に、大きな流れとして何がテーマになっているのかを解説することが必要だろう。