投稿日: Mar 02, 2016 1:30:24 AM
アメリカでジャーナリズムの役割は物議を醸すことだということを聞いたことがある。スキャンダルだとか大論争が巻き起こればメディアは売れるであろうから、ビジネス的にも正しいかもしれない。これは世の中には隠された真実があって、それが力で隠蔽されているのをジャーナリズムはこじ開けることが出来るのだ、といいたいのかもしれない。しかし現実には真実を伝えるジャーナリズムの振りをしてインチキな情報を流す輩も出てくるので、結局のところ国民にとってはなにが真実なのかはわからないものだ。
インチキなジャーナリズムになればなるほど煽るのが上手になるという傾向はあるだろう。ネットの何々速報とかの多くは見出しを刺激的にしているだけで、中身がスカスカであったり、誤解の塊であったり、すごい論理飛躍をしていたりで、やはり2chの延長だなと思わざるを得ない。スマホの暇潰しでもこんなものを見るくらいならスポーツ新聞を読んでいた方がまだしも現代文の勉強になる。しかし数字として表れるページビューを競うネット界では、紙媒体以上にインチキメディアが闊歩している。
こういったものもSNS上に頻繁に現れるようになったので、しだいにSNSも鬱陶しいと感じる人が増えているのではないだろうか。もし良質のコンテンツだけを見るとなると、ネットでも限られたリソースしかなく、物足りなく思うだろう。しかしそういうものを増やしていくとかシェアしていくことも重要だろうと思う。
報道写真でいえば、Boston Globe という新聞社が随分前から Big Picture というサイトで日々良質な写真を提供している。とはいっても事件の凄い写真が並んでいるわけでもなく、どちらかというと新聞紙面には載らなかったようなものから、再選択していると思われる。平凡な日常生活の一コマのようなものもあるのだが、1枚の写真の前に立ち止まってジーッと見つめてしまうことがあるし、考えさせられることもあり、写真の力というのも感じてしまう。
当然写真の力を感じれば写真家の力も感じるわけだし、記事の力を感じれば記者の力を感じるわけだし、またその媒体の力も感じることになろう。つまるところ良質コンテンツとは提供者側に何かしっかりしたものを感じるかどうかということでもあると思う。これはやはりある程度長い期間の評価で決まることで、発表された断片的な情報だけでは判断できない。サイトでいえばブランディングであるが、インターネットが20年も経っているのに Boston Globe の Big Picture ような見に行きたくなるサイトが少ないのが残念である。
企業がオウンドメディアとしてコンテンツ提供するところでも、まだ良質なコンテンツのあるところは少ない。おそらくWebなりネットのメディアを新たにプロデュースする際に、ビジネスのPDCAとか採算のことしか考えていなかったのではないかと思う。CookPadはレシピの画面から郵便番号を入力すると近隣のスーパーのチラシが見られるような連携をしていて、なるほどと思ったことがあり、確かにビジネス観点では進歩が続いているのだが、いつまでたっても今晩の献立に悩むところから離れる気が無いと、ブランド展開はないだろう。頑張っているだけに、ちょっと惜しい気がする。
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