投稿日: Mar 29, 2016 12:55:54 AM
音楽や動画や電子書籍の配信の際に、いわゆるコピー防止技術として使われるDRM(Digital Rights Management)は、利用者の利便性を損なうものとして嫌われている。利用者にとっては私的複製ができないからで、一旦購入したものをどこでどのように楽しもうと自由にさせてほしいので、過去からレコードをテープに録音するなどいろんなデバイスで使うための私的複製をしていたからである。私的複製権というのはデジタルの時代でも引き継がれている。
コンテンツの販売・配信をする側としては、あまり利用局面を狭めてしまうと普及しにくいので、コピー防止の技術などで利便性がひどく悪くならないようには気を付けていた。だからガチガチのコピー防止技術はあまり広まらなかった。またどんなに技術が発達しても、映画館のスクリーンをビデオに撮ってDVDを焼くような海賊版まで規制することはできない。基本はそもそも法治国家なので、不法を働くものを摘発すれば警察が捕まえて司法が裁くルールであり、コンテンツ提供者が自分で取締りまでする必要もない。
Steve Jobs は音楽配信を主流にしたかったので、DRMは誰のためにもならないという不要論者であった。レコード・CDの業界はコピー防止なしでは不安だったが、レコードと違って音楽配信というのは単価の安いビジネスなので、コピー防止とかDRMは提供側のコスト要因にもなるからだ。パッケージメディアにおいても防止技術のライセンス料は結構な負担となっていて、一旦採用しても辞めた会社が多かった。
一般市民感情としてはラジオ・テレビまたBGMで無料で聴けるものにプロテクトを施すのはおかしいということもあって、マーケティング上もDRMなしの方がビジネスがすすめやすかった。
時代は変わって個々の楽曲を音楽配信して、利用者が何らかの管理を自分でするよりも、ネット接続さえできれば何時でも何処でも聞き放題のクラウド型音楽提供が伸びるようになって、DRM議論も下火になったように思う。利用者が私的複製をする必要すらなくなったからである。こういったモデルの場合は月額の購読料さえ払っていれば、「クラウド上のものはオレのもの」ということになるからだ。
ここではDRMというよりも利用者管理のようなシステムになる。そこで得られたコンテンツ利用履歴とか、コンテンツ側からどんなユーザに好まれているのか、というのはビッグデータ処理できるので、オススメが発達すると考えられている。あるいはオススメ以上の個人のエージェント機能になるともいえる。
今でも検索技術の応用程度のオススメはどこでも行われているが、配信サービスの価値はオススメの良し悪しになっていくのではないかと思うが、その成果はいつごろ実感できるのだろうか?
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