投稿日: Dec 14, 2010 10:49:4 PM
メディアがビッグビジネスでなくなりつつあると思う方へ
12月14日(火)にMEDIVERSEキックオフイベントを開催し、2011年にメディアビジネスの台風になりそうなもののトレンドとして、次の3つのセッションを行った。
1.Facebook、SNSとコミュニケーション構造
2.スマートフォン(iPhone、Android)
3.Google TV vs Apple TV
これらを通じて感じたことを手短に述べると、あまり投資を必要としないところで大きな変化があり得るな、ということである。今日本ではデジタル放送移行で毎日NHKでは買い替えやアンテナの対応、インターネットの接続などの説明を行っているが、例えばCATVの普及でもケータイの普及でもそんなキャンペーンのようなことはなくても広がった。スカイツリーが無かったとしてもCATVでTVがみられるところは多いし、それ以外の世帯でも光ケーブルが行っていない地域はほとんどないだろうから、デジタル放送のやりようは今としてはいろいろ考えられる。21世紀になってTVのアナログ停波が検討され数年のうちに実施してしまったドイツやアメリカも昨年アナログ停波の例がある中で、日本は遠慮がちに見えるし、その見直しも行っていないうちに環境がネットTVの方に動き始めた感がある。アナログのマイナス分を超えるデジタルのプラス分は、既存メディア業界から出てくるのではなく、別のデジタルメディアの担い手が登場を狙っていることを感じたイベントだった。
第2次大戦とその後の冷戦の中で放送行政という統制的なものがあったからこそマスメディアは発達した。これが分解されるとミニメディアになってしまい、巨大な広告費とそれに基づいた番組制作ができにくくなるというのが3番目のセッションで話された。しかしメディアは多様化していくので、ローコストコンテンツが増えていくことになる。それは断片的なものなので、それら束ねてどのように面白く構成するか、というのがGoogle TV や Apple TVの方向かもしれない。
2番目のスマートフォンのセッションではiPhoneが日本では主婦層に広がっているとか、スマートフォンで無料とか廉価で楽しめることが増えて「ビンボーハッピー」という話があった。TVや情報家電の歴史を振り返ると、すべてが「ビンボーハッピー」を実現するベクトルで発展してきたのではないかということだった。ネットで無料が可能なのは広告がたくさん付くからではなく、一旦制作したら電気代しかコストがかからないからである。それはデータセンタや通信業者の徴収分で賄われる。音楽も動画もどんどんそういった世界になりつつある。電子書籍もそれに加わろうとしているが、かつての物流支配からどこへパワーシフトするのかが見えない。コンテンツビジネスにはまた憂鬱な1年かもしれない。
日本ではSNSやゲームが個別に発達したのに対して、Facebookはいろいろなサービスを統合して急成長した。日本はすぐにはFacebookのようなサービスの一元化はしないだろうと皆さんは考えている。しかし一元化の意味は、利用者個人の起きてから寝るまでのタイムラインになりえることで、今朝起きてから寝るまでTVを時計代わりに生活している人がいるとか、twitterを常時していてそれがその人のタイムラインになっている人もいるように、スマートフォン時代にはSNSが個人のタイムライン統合してしまう可能性はある。そうなるとソーシャルの要素よりもパーソナルな要素(エージェンシーとか)が強くなるので、SNSとは違う概念が何か出てくるかもしれない。
全体として、産業としてのメディアは小粒になるが、デジタルメディアが個人の暮らしをハッピーに支えることは、今後もっと盛んになるように感じた。