投稿日: Mar 17, 2012 1:0:5 AM
ステークホルダが足を引っ張ると思う方へ
日本ではどの組織も過度に民主主義的なプロセスに支配された結果として無責任集団になりがちだということを、記事『日本の病 スピード感の喪失』で書いた。これはひとつの会社や組織の内部に止まらず、他社との関係でも言えて、商品を開発しても広報や流通・販促などのコラボレーションに時間がかかっていたのではバリューチェーンもなにもあったものではなくなる。この間に日本でイノベーションが起こったところを見ると、iPhoneなどを最初に契約したソフトバンクのような若い会社で創業者が陣頭指揮をとっているところになり、これはすべての計画を自分でコントロールしているAppleと同じように、ある意味民主主義を超えた運営になっていて、それが対外的にも強みである。
つまりITやネットでせっかくサプライチェーンマネジメントができるとか、情報共有ができるとか、顧客とのコンタクトを増やせるなどビジネスを広げられる可能性があっても、新しいことをする決断に時間をかけているうちに、ステークホルダの間からそうしたくない想いが次第に膨らんで、『インターネットで電気ガス水道などの使用量の検針をすると、検針をする人の職を奪う』とか、『ネットで話題になると意図に反した書き込みがされるから、ネットに出さない』などの、まるで主客転倒した結論を出してしまう例も多い。大企業とか大都会の公共団体がこういう議論しかできないなら日本は集団無責任状態で、かなりの部分が崩壊して、新たなプレーヤーが育ってくるまで暗黒時代になるかもしれない。
普通なら、今まで検針をしていた人の業務転換を速やかに行なうためにeLearningに取り組もうとか、自社の製品やサービスに対する理解を増やし誤解を解くためにネットのコミュニケーションを使おう、と考えるはずであるのに、取り組む姿勢が前述のように歪曲していては、一見似たようなIT応用をしていてもプラスはない。Webで問い合わせメールを送っても返事のないWebサイトは多く、当然ながらそういう会社がソーシャルメディアを有効に使う可能性は皆無である。ところが日本ではこんな歪曲があらゆるところでまかり通っているので、そこからの脱却がITやネットへの投資とともに必須になる。
そもそも日本では官公庁が音頭をとる護送船団方式で業界指導がされると自分を弱めて自分の可能性を殺すようなことをしてきた。国の産業政策が最初から無益だったわけではないが、半導体をみても上り坂の場合はプラスになっても、ピークを超えると逆にマイナス面が多く出てしまった。それは古いビジネスモデルの延命が優先して、新しいことを立ち上げる邪魔をするからだ。この延命策に載って経営することこそが日本病で、ビジネスの転換のスピード感を落とすだけでなく、国内で多くの不毛な競争を生み出す。製品が成熟化するとどの会社のものもどんぐりの背比べになり、競合社との価格競争とか過剰サービスが目下の課題になり、ドリンクの無駄なキャンペーンのような無益の宣伝合戦で広告代理店が売り上げを伸ばすようになってしまった。
つまりビジネスのステークホルダも目の前の競争をするための仕事ばかりになり、次世代を築くことができなくなる。ところが海外はそのような競争とは無縁のグローバル競争を仕掛けるところが切磋琢磨しているので、日本の家電業界の没落のようなことが起こる。しかしこれで日本がダメだといっているのではなく、日本のクリエイティブや開発力を信じるからこそ、その邪魔をする要素をなんとかかいくぐっていく決意が重要だと思う。