投稿日: Oct 12, 2015 2:52:33 AM
YouTubeなどで素人の「ギターがスゲー」みたいなのは多くは速弾きを指しているように思え、音楽性とは関係ないものが多い。記事「Beat goes on (2)」でベンチャーズのギタースタイルについてカントリー・ブルーグラスと、R&B由来のBoogie的要素、JazzのRag的要素などが混ぜ合わされたようなものと書いたが、それらに含まれる速弾きは同じではない。メロディーラインの問題ではなくリズムの取り方の違いで、それらのジャンルの違いを越えて速さを比べるようなものではないし、リズムの取り方が違うとそのジャンルの音楽とは認められないだろうと思う。ベンチャーズはそれらのミックスで独自の要素を持つようになったのだろう。
つまり独自のスタイルを持つようになったなら速弾きでも評価されるようになるが、中途半端なスタイルの速弾きは大道芸程度にしかならないように思える。これは音楽の要素ではGrooveに関係している。wikipediaでは、「グルーヴ(groove)とは音楽用語のひとつ。形容詞はグルーヴィー(groovy)。ある種の高揚感を指す言葉であるが、具体的な定義は決まっていない。波、うねりの感じからジャズ、レゲエ、ソウルなどブラックミュージックの音楽・演奏を表現する言葉に転じた言葉で…」として、一言でいえば「ノリ」を表す言葉となっている。
白人のBluesがホンモノかニセモノか、というのも肌の色とか出身地よりも、その音楽のGroove感で判断される。記事『Hollywood Fats 伝説』『白い黒人』ではgroove感では黒人と区別つかない白人のことを書いたが、Bluesは割と独自のGroove感がはっきりした音楽で、またあまり速弾きの要素が無いという点も、今日ではポピュラリティを持たない理由かもしれない。
アメリカで1960年代になって黒人Bluesの録音が滅多にされなくなっても、R&BやSoulの中にBluesのGrooveは生き続けたわけで、それも先細りではあってもいまだに続いている。これはアメリカの中にいるとわかるのだろうが、外からはなかなかわからないことを、記事『60年代音楽再考察』で書いた。
逆に言えば、日本の若者がRapとかHipHopをやっても民謡のようになってしまうのも、日本的grooveから離れにくいことをあらわしている。それを越えてアメリカ黒人のgrooveを身に着けようと思っても、レコードを通じてではgrooveは解り難いのだろう。blues grooveの場合は、リズムをズラすのと戻すとの繰り返しであり、ズラすのは前のめりの場合も、遅れの場合もあり、こういったユレを楽しむには、逆にバックには非常に正確なリズムセクションがなければキモチ悪いものになってしまう。つまり日本人がマスターしようとすると、まずは正確なリズムの完璧コピーから始めなければならないのだろう。