投稿日: Nov 29, 2011 12:50:40 AM
身近に商機があると思う方へ
早稲田大学ソーシャルアントレプレナー研究会・新聞販売店イノベーション研究部会第3回が11月26日に行われた。第1回は記事『新聞をとりまくソーシャルビジネス』 に書いたように、新聞販売店自立した経営を考えるに際して各テリトリーで地域貢献にもなる取り組み始めていることがわかった。第2回は記事『自立したタネから可能性の芽が出る』に書いたが朝日オリコミ鍋島裕俊氏のオリコミ広告概論と電子チラシ動向のプレゼン、また新聞販売店店頭における野菜産直販売活動の報告があった。今回はいよいよ新聞販売店が新聞以外のビジネスをどのようにしているのかの具体例を、ASA田町の本橋常彦氏が紹介した。マーケティング・販促の世界では、新聞の配布網は日本郵便JPのタウンメール・タウンプラスのサービスほどにも意識されていないかもしれないが、独自のポテンシャルがあることがわかった。
本橋氏は新聞販売店の強みとして、①告知能力 ②デリバリー能力 ③集金・決済能力 ④対面営業 の4点を挙げていた。しかしこれらを発揮するには、当然ながら発想力と行動力が必要であり、スタッフが目的とか事業の背景をよく理解していなければならない。新聞社が割り当てたテリトリー以外の要素はすべて仕事にかかわる人的能力といえるが、それを高めるにも①~④を実際経験させることが重要に思えた。言い換えると汗をかいていろいろやる余地がまだ多くあるな、という感想である。
告知能力
訪問販売が何かと問題を起こすことがあるが、直接対面でセールスするのではなく、チラシで告知して申し込みを受ける形で訪問すれば問題を起こさない。特産品、チケット、防災用品、また住宅サービス・住民サービスなど、今日ではかなり広まっていると思われる。ASA田町ではチラシ制作・印刷のサービスも以前から行っている。お役所の中に積みっぱなしになっている諸案内をさばくという提案もあるようだ。
デリバリー能力
花王ヘルシヤまろやかという飲料のサンプルを1週間以内で10万本配達したことがあるという。これは路上でのサンプル配布ができないものだったので、ホワイトカラー向けの宅配という方法が採られることになった。また防災用品などもって帰り難い物でも新聞配達の間の時間帯で宅配が行える。これは新聞だけでは配達能力をもてあますくらいのものだといえるだろう。
集金・決済能力
チケット販売などでは、昼間にポストに入れておき、月ぎめで新聞代と共に集金することができる。この告知・受付から配達・集金まで一貫して行える点が新聞販売店の特徴であろうが、非常に小エリアを細かくフェイストゥフェイスで管理しているので問題を起こし難いことが強みである。
対面営業
朝日新聞が2002年のWorldCup観戦券プレゼントの応募を集めた際に、電通は応募数が20万くらいかと思っていたのが、実際には200万ほど応募があったという。これは販売店が集金や訪問の際に、「もう応募はされましたか」という声掛けをしていたからだ。JPからアンケートを受注した話もあったが、それはJPよりも細かい選別配布が可能だったからだという。
選別配布に関してはいくつか質問が出された。しかしこれはCRMのようなものではなく、例えばマンションチラシなどを扱っていると高額物件がわかるので、そこをターゲットに配ることができる、というような経験からくるものである。一時期住民台帳のデータ化をしたそうだが、データメンテを考えると新聞販売店には向かない方法である。
今回のASA田町の話は、あくまで自分のもっているもので新ビジネスをするものであって、投資はしていない。従業員にとっても今の仕事の延長でできる範囲にしていて、それ以上の知識やスキルの必要なことは店長・所長の仕事になっている。という意味では上記4点の強みをベースにしたビジネスはどこにでも当てはまるものといえそうだ。