投稿日: Sep 28, 2011 10:38:46 PM
Amazonらしさはどこにあるのかと思う方へ
AmazonからKindleFireの全容が発表された。まず過去のKindleはモノクロの先鋒隊がeReadingを根付かせ、学生向けの安い端末も出したが、それはイマイチであった。今回はエントリー向けには3Gなし広告付で79ドルのモノクロ端末で再挑戦している。この値段であるとKindleを試して有用性を認識した親たちが子供に買い与えられる。子供は親のしていることを真似るので、eReadingで育つはずである。3Gがないのも理にかなっていて、コンテンツは親が買い与えることを想定しているのだろう。別に子供でなくても79ドルなら買うという人は居るだろうが、学生相手の安い端末から、思い切って半額にして子供を狙った(と思われる)着実な戦略はAmazonらさがある。
AmazonのFireの外見はiPadを小さくして半額にしただけではないかと思うかもしれない。またカラー化に伴ってエンタメ全般を対象に低額コンテンツを提供する点も、iPadの後追いとかNook、Androidなどの端末と同じコンセプトと思うかもしれない。デバイスの構造だけ見ている人は最近撤退したガラパゴスとどう違うのかといいそうだが、端末の背後にあるAmazonのビジネスに直結している点が最大の差であろう。コンテンツに関しては1800万件あるというのは天文学的な数字で、神田の本屋街にある全コンテンツをユニークに数えるといくつあるのかしらないが、オーダーとしてはそれくらいの規模感がある。そういったAmazonストアの土台の上にあり、Amazonでのコンテンツを買って楽しむ延長上に、何らかの新しいエクスペリエンスを追加するであろう、という位置づけだ。
Androidをある方向に特化・専用機化しているというのは、おそらくパソコンの延長的なコンピュータ機能は相当削っているはずで、汎用モバイルガジェットと横並びに評価されて埋没することを避ける考えだろう。ブラウザはAmazon専用のものが使われているのも、html5やepubなど標準がまだ流動的な段階で、再現性の不安定さを感じさせないために、コンテンツとブラウザを歩調を合わせて進歩させるためだろう。これはePubがずっと揺らぎつつ進歩する中で、Appleが一つのリーダーで再現の安定を確保していたり、Kindleが安定しているのがビジネス的に成功したことを引き継いでいると思う。
おそらく最大の特徴はAmazonが持つクラウドの利用で、KindleFireはWiFi専用であり、WebブラウザSilkもAmazon側がプロキシのような役割を果たして、通常なら一つのWebページを表示するのにいくつものサイトから多くのファイルやスクリプトをかき集めることをスマートにやってのけ、利用者側に最適化してデータを送り出すことで、もっとも速く使えるようにするという。またKindleFireはフラッシュメモリが8GBと大きくはなく、その代わりにAmazonのクラウドに買ったコンテンツを無制限に置けるようにしている。これは「置く」というか、そもそもAmazonのクラウドからダウンロードして買ったものをAmazonに預けるというのは、本屋を自分の書棚にするようなすごいエコなことで、コンテンツの購入と利用の概念を変えてしまう狙いもあるのかと思わせる。
つまりAmazonがこれまで培ってきた世界的に競争力ある実積の上に、Amazon自身の一歩先の目標である動画を視野に入れ、また長期的にデジタルコンテンツビジネスのあり方も模索するという、力の入った戦略が伺える。