投稿日: Jan 22, 2013 1:32:35 AM
新しい体験を創りだしたいと思う方へ
私は過去に日曜学校で幼児から中学生くらいまでに図工の創作をさせることを手伝っていて、その子供たちの中で美術・デザイン系の学校に進んだ人が3人居て、そういった職についた人は一人居た。こういった過程を通じて、子供たちがどんなゲームやメディアに触れているのかというのも見てきた。中には図工が苦手な子供もいるのだが、落書きも含めて子供たちがいろいろ描けたり、また文字や言葉の表現も多様にできることに大変刺激を受けた。子供たちに教えるというよりも、大人の価値観を壊していかないと、この子供たちと一緒には居られないなという、むしろあせりのようなものを感じたくらいである。
例えばデコというジャンルがあるようで、ネイルでもケータイでもアクセサリでもノートでもいろんなものを貼りまくる。これはクダラナイと思う大人も居るとは思うが、もしこれが1000年後の地球で遺跡の中から発見されたとすると、1000年前の人はこんなものを作っていたということで博物館なり美術館に展示されるであろう。自分の子供を大量の蝶を羽化している温室のようなところに連れて行って、おみやげに小さな蝶が沢山あるシールを買って帰ったら、襖の全面に蝶を散らして貼りだしたことがあって、別に絵筆や画用紙がなくても子供たちは視覚表現をしているのだなと思った。
そういった育ち方をした人が、今日では自分のホームページやブログで自分の作品を発表している人やコミケなどに出している若い人になっているのだろうから、クリエータの育成という点では、紙かデジタルかオブジェかというような素材・メディアは全くどうでもいい話で、既存のギョーカイを起点にコンテンツを考える大人とのすれ違いはそこらへんにあるように思う。
言い換えると、若い人は本とDVDが並んで売られていても何の違和感も持たないし、雑誌を立ち読みするのにコンビニと書店を区別はしていないだろうが、売る側からは本とDVDでは作る業界が異なるとか、コンビニと書店では業界が異なるということで、あくまで自分の業界の窓を通してでないと生活者を見る事が出来なくなっているのだろう。それを強く感じるのが実は電子書籍であって、出版社や制作や流通の立場からそれぞれバラバラな想いで取り組んでも、それらの組み合わせが若い人にピッタリくるものとはならないだろう。紙の本の代替にしかならない電子書籍はもう終わっている。
音楽産業に関していえば、レコードであろうとCDであろうとオンラインのダウンロードであろうと、そんなことは音楽の楽しみ方の本質ではなく、記事『キュレータは金になるのか?』でヨーロッパのClub文化の盛り上がりに触れたが、ライブも含めて音楽を媒介にした新しいエクスペリエンスを提供することに価値が出るのである。冒頭に書いたように若い人の創造力が引き出されば、電子書籍をネットで売るという新味がないビジネスは簡単に乗り越えられていく日が来るだろう。今雑誌が滅びつつあるのは、作る側に若い人の創造力が反映しないようになったことを思い出すべきだ。