投稿日: May 11, 2013 1:19:44 AM
マルチユースは難しいと思う方へ
日本の学校でも生徒や学生全員にタブレットを持たせるという話があちこちで起こりつつある。一方でオンライン環境は気が散るという話もある。ということは学校が配ってくれるタブレットで遊びまわるわけにはいかなくなるだろう。子供たちのカバンの中は、自分用、学校用、塾用などいろんなタブレットが詰め込まれるのかもしれない。充電するだけでもたいへんそうだなぁ。学校で充電させることも制約されるだろうし、充電できるカバンというのもできるだろう。
今タブレットを話題にしている人はガジェットが好きな人なのだろうが、世の中はそういう人ばかりではないから、モバイルはうっとおしいと思われる時もくるかもしれない。
それはともかく、タブレット用コンテンツが追いつくかどうかというのが一番の懸念である。学習用であればコンテンツそのものはすでにあるのだろうが、それは殆どが紙用なので「見せるだけ」しか考えていない。それに対して、デジタルなら、マルチメディアなら、ネットなら、クラウドなら、といろいろな工夫を盛り込んで新たな学習環境を提案するものが増えつつある。そのようなアイディアを思いついてベンチャーを起業しようとする人も出てくるかもしれない。
しかしそういったプロトタイプを作ることは、電子雑誌でも行われていたことだし、もっと古くはマルチメディアコンテンツの開発のときにも同じようなことを行っていた。しかもそれらに取り組むのはなかなか大変で、電子雑誌もマルチメディアもブレイクせずに、安直にオーサリングできるWebに行き着いたことを振り返ってみるべきだ。紙用の「見せるだけ」から一歩踏み出すとなると、ユーザインタフェース設計と制作ツール・オーサリング・検証という負荷が重くのしかかってくるからである。
おそらく長期的にはこれらは定着してコンテンツを加工する人にとって何の負担にもならないものになるのであろうが、今の段階では原稿を用意する以外の負荷がかかるとペイしなくなってしまう。だから技術的にタブレットやモバイルあるいはクラウドで何ができるというよりも、それでどのような効用があるのかという投資に対する見返りがはっきり想定できるような新事業プランが必要になる。
何かの方法論に則れば誰でも成功するというソリューションは存在せず、開発側と運用者側が一緒に試行錯誤をしなければよい結果は生まれないのだから、安直な革新的アプローチに人は容易には乗ってくれないようになっている。
つまり学習コンテンツもタブレットの能力の側から考えるよりも、紙用コンテンツに毛が生えた程度でもいいから、運用や効果検証のことを、まずは考える段階であるのだろうと思う。