投稿日: Oct 25, 2011 12:56:27 AM
Webで足りないものは…と思う方へ
読むことと書くことは別個にあるわけではなく、何らかの循環がある。書かれたもののテーマやスタイルも、書いた人が過去にどのようなものを読んでいたかに関係するだろう。仕事で使う文書は横書きであるのは、学校教育が国語や古典以外は横になっていることと関係している。レポートを書くにも横で訓練を受けている。縦書きの原稿用紙の升目を埋めている日本人が現在どの程度居るのかと思う。文学系が最終的には縦書きに組まれるとしても、原稿はパソコンで横書きで打っている人は多いだろう。将来縦書きはどうなるのか、というテーマはある。古い様式としては残っていくであろう。これはこれで歴史が長いからである。今日常的に手書きが減って、何らかのデジタルデバイスで文章を作っているとすると、本当なら縦書き作品のためには縦書きBlogとかのニーズもあっていいはずだが、そうはなっていない。
縦に書くという習慣が減っていると思えることは、電子書籍で縦組の失敗の例をみていてもわかる。縦の場合の記号・約物・拗促音の扱いの間違いに気がつきにくくなっているからだ。おそらくもう印刷のような縦組ルールはデジタルデバイスで再現されず、もっと緩いものになり、ePub3.0の縦組もどんどん深みにはまることにはならないだろう。これは縦横問題に限らず、印刷であれ手書きであれ、紙に書き表す文明が減って、画面に向かって書いたり読んだりする時代になりつつあるからだ。
最初に人々が接したワードプロセッサはデジタル機器ではあっても紙の文化を踏襲していたので、日本語WordでもJISの行組版方法を参考にしていた。しかしWebのブラウザの時代になると、デフォルトでそういった組版はしていない。前述の記号・約物・拗促音の扱いの間違いが電子書籍で起こったのは、ブラウザの延長上の技術が使われているからである。さらにいえば、そもそも縦に入力するところがWebにはないので、ブラウザに小手先の細工をして縦の表現をしても、ほつれが出やすいことになる。(縦中横のいろんなケースを考えてみると、書き手と読み手をつなぐルールが未熟なことがわかる)
Webの発展の経緯を振り返ると、最初は情報を発信するものであったために、テキストエディタでタグをはさみながら文章を書くものであった。Webの広まりはタグを意識させないようにすることで起こり、掲示板、Blog、SNSと進んだものの、どちらかというと断片的な文章を作る方向にあるために、レポートの作成とか複数の文章を編集することはWebでは進化していない。GoogleのクラウドサービスでもMSOffice互換のような紙の延長上のスタイルになっていて、Webページを切り貼りするとなると、一旦プレーンテキストに戻して行われ、見出しや箇条書き、注などの区別がカオスになってしまう。Webは書くことに関しては未熟な点がいろいろあり、読むことと書くことの循環は出来上がっていない。
純然たるWebでの編集というとWikiのようなものしかないし、すでに別に存在するWebもソースとして再処理して循環する場合にはWikiでは制約がある。むしろeBookが21世紀になってから取り組まれるようになっていることは、紙の亡霊の復活のようで若干の後戻りではあるが、編集機能の向上が進むことにはなるだろう。eBookという文書パッケージにニーズがあるとすると、Webで雑多なソースの再編集のやりにくさをカバーするものとして位置づけられるのだろう。