投稿日: Jun 17, 2010 2:20:32 PM
メディアビジネスは再び立ち上がれるかと思う方へ
マスメディアの中で近年は雑誌の落ち込みが最も激しい。ピークの半減どころではない減り方である。こういう状況から、Webなどで無料で大量の情報が流通している時代になったのだから、これから有料のメディアビジネスはやっていけないだろうという見方(A)がある。また既存メディアの紙やTVだけでなくWebであっても企業広告はあまり意味を成さなくなって、広告ビジネスはやっていけないだろうという見方(B)もある。雑誌にとってはABどっちの見方でも浮かばれないことになる。
近年フリーペーパーが興隆したことがあって、いっそ無料雑誌なら広告モデルでやっていけるかと思われたが、なかなか広告はとれなくなっている。雑誌のニーズが無いわけではないのだが、印刷コスト、配布コストなどの課題が大きい。これを軽減させる方法として、欧米ではコントロールド・サーキュレーションのようなターゲットを絞った読者層に無料で送るモデルが業界紙誌でみられる。また格安の定期購読も似たような考え方である。過去には実際に特定業界の殆どのところに行き渡るような専門雑誌が多くあった。これらは市場調査やイベントなどと組み合わせたビジネスにもなっているもので、日本ではまだ伸び代があると考えられる。
しかしコントロールド・サーキュレーションをよく考えてみると、これは一種のソーシャルメディアである。現在でも多くの媒体が紙とWebの連動で情報発信をしていて、Webの登録制をしいているが、その実態はソーシャルといえるようなものではない。だいたいは意思決定権を持つ上級管理者を対象にした媒体が多いので、今のところ50歳以上が中心でWebやケータイでのソーシャルは使ってもらえないからだと思う。とするとあと10年くらい我慢しなければならないことになる。
今はソーシャルアプリといえばゲームになってしまっているが、アメリカでの主流はいまだに電子メールで、次がFacebookである。また企業からの電子メールが生活者に嫌われているわけでもなく、内容によっては届くのが待たれている。これは電子メールがpushからpullになりつつあることであり、しだいにソーシャルに収斂していく過程であるとも考えられる。つまりこれから10年が過渡期であるとすると、今ある電子メールなどでできる限りのことをしておくことが将来のためになるのだろう。
冒頭の話に戻って、見方のAはかなり当たっていて、現在の電子出版の有料モデルは苦戦している。スターバックスのWiFiサービスの話で、店内では有料コンテンツが無料になる計画があるように、個人ではなく法人からバルクでお金を取るという有料化に進むかもしれない。見方のBもpush広告はやはり苦戦するだろう。広告をうまくソーシャルに乗せ換えるには、中身を抜本的に変えなければならないという点で、今の広告ビジネスの延長でできるのかどうかが大きな課題である。むしろ雑誌のパブリシティのようなものがもっともソーシャルに近いのかもしれない。つまりスポンサーつきで広告臭くないパブリシティで、ソーシャルを目指すという戦術である。