投稿日: Jun 04, 2012 12:40:15 AM
紙雑誌はやっていけないと思う方へ
町の書店の減少が続いているというニュースがある。出版状況クロニクルによると、日書連加盟の書店数は1990年に12,556あったものが今では4,718と3分の1近くになってしまった。出版業界全体ではこれほどは落ち込んでいないのは、コンビニなどで雑誌が売られるとか大型店が増えているという別のプラス面があるからだ。ともかく大衆娯楽としての雑誌の沈没が町の書店を巻き添えにしていて、雑誌に革新がなければ町の書店は復活しない。おそらく欧米のことを考えてもそうなるだろう。もともと書店は雑誌を置くところではなく、雑誌はキオスク・ニューズスタンド・定期購読で流通していたからだ。
日本でもそのような雑誌流通はあるのだが、定期購読は欧米に比べると劣っている。昔の婦人誌などは通販も行うなどしていてたが、日本は雑誌が広告モデルとして発展したものが多くあって、読者のコミュニティ的のものの形成に熱心でなかったからだ。欧米でも定期購読は厳しいし、通販もネットにシフトしていて、雑誌ベースのコミュニティは、よほどニッチな世界でなければ成り立たなくなるのだろう。むしろカタログハウスのように物販に伴って紙の冊子が作られるほうが自然だろう。
つまり日本は高度経済成長に伴って爆発的に広がったメディアが雑誌であって、そのビジネスを効率的にまわしたのが取次ぎと町の書店であった。経済が伸び盛りの時代にあってはTVも雑誌も共に伸びる余地があったのが、経済が縮小するようになってTVに敗れただけでなく、ゲームに敗れ、さらにネットの時代になってWebやケータイに敗れたのが雑誌である。商店街にゲーム店ができたりつぶれるのと同じようなことが、30年とかの単位で書店にも起こったといえる。つまりマス雑誌の主流は大衆娯楽なのだから、デジタルやネットで娯楽がどうなるかがもっとも影響するのが雑誌である。
しかし大手出版社でも漫画や雑誌で稼いで、あまり売れないが面白い雑誌もいっぱい出していたものが、稼ぎ頭が少なくなれば、真っ先に面白い雑誌が切られてしまうのは残念だし、文化的な損失も大きいと思う。読者の側からすると何千人でも有料で買いたい人がいるなら、その範囲で成り立つ方法で刊行を続けてもらいたいのだが、大手出版社の経営からするとコスト的に合わないということになるのだろう。本当なら読者コミュニティが形成されやすい専門的あるいはニッチな分野こそ、印刷コストがかからないデジタルマガジンが向いているのだろうが、現実にそのようなシフトで成功していると思えるものはない。
Webの時代には特定の分野のBloggerを集めてBlogメディアを作ることが流行って、またそれらのネタを拾って再編集するpaper.li flipboard という再配布もあるが、そういった世界に紙の有料雑誌の著者はなかなかつながっていないで、デジタル目メディアの二流感がぬぐえない。それは紙の雑誌出版社がもうデジタルメディア上では企画できなくなっているからだが、どこか別のところが著者を束ねてデジタルマガジンを企画する余地は残っていると思う。