投稿日: Jun 18, 2015 1:10:59 AM
1960年代のフォークロックの時代に流行った "Needles and Pins" という曲をご存じだろうか? 元歌はCher(当時シェール)だが、印象深いのはJackie DeShanon の歌で、あれから50年経っても年に2回くらいはコンスタントに聴いている。YouTubeで当時のテレビ番組の動画が見れるようになっている。
彼女はこのころ20歳くらいで、後にソングライターとして活躍するようになる。デビューは確か1950年代後半の13歳くらいで、最初はJackie Lee とか Jackie Shanon と名乗っていた。1950年代末にBrenda Lee が頭角を現していたので、Jackie Leeという命名はそれと似た線を狙っていたと考えられる。つまり10代の少女なのに黒人かと思わせるようなパンチの利いた歌い方を売り物にしていたが、ヒットは出なかったので、日本には入ってこなかった(と思っていた)。
しかしよく調べてみると、1959年にDot(日本ビクター扱い)からBluesシングルが出ていて、それがどうも日本でもあったようだ。曲名は Trouble であるが、邦題は「もめごとむすめ」になっている。JazzやR&Bの一部ではなくBluesが日本で発売されたものとしては非常に早いのだが、実はこの前年にElvis Presleyがこの曲をだしている(「もめごとむすこ」ではなかったが…)ので、そのカバーということになる。
Elvis Presley はデビュー当時からレパートリーに相当Bluesをもっていて、エルビス節にしてしまうとBluesとは思われないものもあったのだろうが、映画の挿入歌などでは自然な歌い方でBluesを残しているものもあるし、コンサートなどでは真面目にBluesを歌うこともあった。ElvisのBluesは黒人が聴いても自然なもののようで、黒人もレコードを買っていたし、黒人向けに宣伝しているRCAの資料を見たこともある。
Elvisが歌ったBluesと同じ様な曲調のBluesは白人のロカビリーとかカントリー&ウエスタンの歌手にも歌われるようになった。これらからアメリカの白人がBluesを学ぶきっかけはElvisであったといってもよいほどで、Jackie DeShanon のような女性でも影響を受けていたのは驚きだった。
実際に45回転レコードのBluesを集めていて、これは白人か黒人かと迷うことはよくあるのだが、うまいBluesはたいていはRockの人ではなく、カントリー&ウエスタンの人である。こういった方はElvis伝来のBluesも継承すると同時に、アメリカ黒人のやるBluesを直接模倣することもしていたようである。
面白いのはこのカントリー系の歌手は、ヒットしているR&Bよりも、ヒットしないローカルな黒人Bluesをとりあげている点である。またElvisもカントリー系もJimmy Reed 以外のシカゴブルースはやらなかった。そして1960年代に非黒人の間にブルースブームが起きた際には、このカントリー系の人は時代の潮流に乗ってブルースを録音することはしなかったので、アメリカには白人のブルースは無いかのように思われたし、シカゴブルースに傾倒したイギリスの若者がもっぱらブルースの伝道師をやっているように人々の目には映ったのだった。
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