投稿日: Jan 18, 2011 10:25:41 PM
過剰な期待があるのではないかと思う方へ
WebのIT関連記事のアクセス解析をすると、iPhone、iPadやAndroidなどガジェットに関するものが高く出る傾向にあるという。世界的にガジェットは注目を浴びていて、CESでも中心的な話題になっているので、無理からぬ話ではある。新しいガジェットがどんな性能になって出てくるのかは、それを構成している要素技術を見ればわかることなので、IT関連記事に興味がある人はもっと要素技術のことも知りたいのではないかと思うのだが、日本ではそうはなっていない。これは日本人にとってはITそのものも、ガジェットのようにブレイクするものも投資の対象では無くなっているからではないか。一方アメリカは伸びそうなものは何でもニュースになる。例えばiPadなどの液晶も日本では撤退するところが出てくるのに対して、サムスンはApple用ELの大投資をするなど日本の明暗というのもあって、日本が弱まっている要素技術に関心が減ってしまったのかもしれない。
ガジェットのニュースを人がどう見ているか想像すると、一般人は魔法の器具のように思うだろう。しかし今までのパソコンよりも便利・高性能・安価を期待するのは無理で、例えばCPUの性能と消費電力は相関しているのでバッテリーの大きさや持ちと関係し、機能的には魅力的なスマートフォンの方がガラケーよりも重いとか充電が持たないことになる。つまりCPUなりバッテリーの技術革新がなければ今以上のものにはならないので、それぞれの技術のロードマップが今後どうなっているのかがニュースの焦点になるはずだ。
しかしCPUに関しては、iPhone、iPad、およびAndroid端末のほとんどが、ニンテンドーDSやソニーPSPで経験を積んだARMアーキテクチャを採用していて、それ以外にケータイ版や組み込み用途も数多くあり、かつてはAppleのNewtonで使われていたCPUの末裔であり、このCPUの展開が数多くのガジェットを作ってきたことや、今の製造技術、さらには急には改善できない限界などが理解できれば、勝手にガジェットの夢を広げた事業プランにはならないだろう。この分野は日本のトロンチップやH8があったが、今はARMを追いかけるのはケータイCPUの一部しかない。しばらくはARM技術は安定期にあり、Windowsも対応の準備をしているので、Windowsのガジェットが出るのも時間の問題となった。逆にガジェットのCPU差はなくなり、グラフィックのプロセッサの方がガジェットの差別要因になるかもしれない。
NewtonとiPadを比較すると、ARMのCPUの製造技術が進んだのは他の半導体と同じ条件であり、それ以外にフラッシュメモリの登場、3GやWiFiの登場、リチウムイオンでバッテリ能力が倍増したこと、カラー液晶などなど好条件として組み合わさったことが、iPadの出現につながっていることが分かる。こういった要素技術の革新があって、それらの組み合わせで出現するもが順次変わっていく、というのがガジェットの歴史である。iPhoneのカメラが好評で、コンパクトデジカメを喰うのではないかという人もいる。汎用的なガジェットの高性能化が、大衆向けの専用ガジェットを喰っていくことは進むだろうが、プロの生産性が求められる仕事に使われるのはまだ先だろう。