投稿日: Jun 26, 2012 12:31:37 AM
コンテンツでも流通革命があると思う方へ
さくらんぼのシーズンなので先週は佐藤錦のおすそわけに2回あずかった。農産物出荷の1割ほどが産直になっているらしいことを過去に書いたが、日本はもともと贈答品として産地のものを尊重する習慣があった上に、宅配便やネットの発達で誰でも容易に産直のやり取りができるようになってきた。クール宅急便などで海産物も日本中を行き交うことができるようになった。これがいろんな分野に広がることは想像できるが、それとは別に流通を越えて生産というものが今までと異なる方向に進みつつあることもわかる。つまりビジネスというのは大量生産・大量消費というところに焦点をあてていたところから、無理な大量生産をせずに生産と消費のバランスをとる方向である。
理想は必要量だけ作るのが無駄がないが、これは事前にはわからない。だから従来はなるべく多くの注文をとって、少量生産のものもまとめて対応していた。例えば農協は地域の農家が個別の畑で作ったものをまとめて一律の箱に入れて出荷し、それが消費地の中央卸売市場に集まってきて、そこで一括して価格交渉がされた。これが支配的な流通になると生産者は値づけに全く関与することができず、たとえ付加価値の高いモノを作ってもなかなか対価を得ることができなかった。当然農協単位では農産物のブランディングは行っていたが、個別の産品の値つけはできない仕組みだった。
産直とか自主流通というのは生産者にも流通や販促の負担をかけるものではあるが、値づけの権利を手に入れるので、うまく経営できる場合もある。何よりも目標を掲げて経営努力をすることが可能になる点が、農協や流通の枠組みに組み入れられて受身で生産するのと正反対であり、まだ全体の1割に過ぎないとはいっても、伸びしろは大きいだろう。従来は生協・スーパーやファミレスなどと契約して生産することで、農協や卸を飛ばして両者に益があるということがあったが、野菜のネット通販の時代になり、さらにこれからはネットでの予約生産という時代に入るだろう。さくらんぼのような季節商品の場合は、想定収穫量を考えて予約をとって、旬の出荷をすることができやすいだろう。そのような直販では、収穫期から数えて何時が食べ頃であると書かれたものが届けられ、卸・小売を経る間に食べ頃を逃すことがなくなる。
一時CDでもオンデマンドで焼いて届けるというものがあったが、どうなったのだろうか?書籍では復刊のシステムが似たようなものである。従来の大規模集中処理の流通を使わない代わりに、独自の工夫が必要になるが、量産主義でははじかれた内容が扱えるとか、買う側からしても「こういうものが欲しい」ということにマッチングしやすいかもしれない。ただし現状ではこの両者のマッチングの解というのはなくて、誰でも参入できるようにはなっていないが、何度かとりあげているeBayのようなマッチングシステムの進歩にはすごいものがあり、エンドtoエンドの流通革命が近づいている。それを先行している例がAmazonであるともいえる。
農産物の場合は過去に現物を知っていないと注文に踏み切れないことは多いだろうがコンテンツとかメディアという商材ならネット上で内容を知ってもらうことも容易である。メディアそのものが紙かデジタルかとは別に、流通革命の先に脱大量生産という革命がありえるだろう。