投稿日: Sep 29, 2012 12:27:47 AM
堅実なビジネス化と考える方へ
デジタル情報処理が普及して、メディアで情報発信するビジネスや、ビジネスでメディアを使わなければならないところには恩恵が多いのだが、儲からないとか費用対効果が悪いという意見もある。これは1980年代からわかっていたことで、それにどう立ち向かっていくかという調査研究に携わってきた。最初にアナログの時代とデジタルの違いとして指摘されたのが、デジタルでは再加工再利用が効率的にできるので、データを構造化して持っておこうということだった。それはCADやSGMLというカタチで世に現れた。その延長上にDTPもマルチメディアもあるのである。
1990年代になって日本でもDTPが現実のものとなった時に考えたのが、メディア制作の仕事の有様がかわるであろうことだった。それまでのメディア制作は工場労働であったのが、記事『産業の底力 : 個人の自律』に書いたように個人的なスキルのコラボレーションになるだろうということで、個人の目標として「DTPエキスパート認証」という資格試験を作った。またこのカバー範囲として画像処理や組版の自動化に限らず、Webとかのデジタルメディアや、コラボレーションに必要な基本的なネット知識、プリントオンデマンド(POD)、などをスキルセットの中に入れた。
10年経ってDTPが主力の制作手段になった時には、「クロスメディアエキスパート認証」という制度の準備を始めた。これはデジタルの制作技術でいろんなメディアが作れるようになっても、世の中とか直接的にはクライアントに役立つことをメディアによってソリューション提供しなければメディアビジネスが広がらないので、問題解決につながる企画・提案能力を高める必要があると考えたからである。アナログの時代から世の中にはメディアのプロデューサは居たが、デジタルの時代にその人たちが能力を発揮するには、彼らを補佐するデジタルが得意なディレクタを置くのが得策だと思った。それから10年経って考えると、もうデジタルネイティブなメディアプロデューサが登場するようになったので、メディア制作の現場からのディレクタ→プロデューサというキャリアパスは必須ではないように思える。
2008年頃から考えたのは、メディアビジネスが企画から情報発信まで短期化しつつあり、リアルタイムな情報提供が求められていることである。実はPODなどは出力側が進んでも企画編集側が全然リアルタイム化に追いついていないで、コンテンツの調達にボトルネックがあることがPODの進展の障害になっていることをデジタル印刷の研究会をして感じた。このコンテンツの調達問題をネットで解決しようという声をいろいろなところにかけて、勉強会などをしていたところ、記事『出版革命は、再びドイツから 』に書いたフランクフルトブックフェアの変貌の話があって、やはりそういうところに焦点があたる段階に来ているのだなと思う。
以上は40年間のメディアビジネスの焦点の移り変わりであるが、そこに含まれる「個人の自律とコラボ」「問題解決につながる企画提案」および「コンテンツ調達能力」の3つの要件は、今後とも効率的なメディアビジネスをするのに必須のものであると思う。
電子出版再構築研究会 名称:オープン・パブリッシング・フォーラム Ebook2.0 Forumと共同開催
10月17日(水)16:00-18:00 新しい出版マーケティングの時代