投稿日: Aug 28, 2013 1:39:47 AM
民間のコラボで世界に挑戦できればいいのだが
アキバの昔話を記事『失われるアキバのダイナミズム』に書いたが、時代と共にアキバの主人公も変遷していて、最初は店の名前に「ラジオ…」が多かったように無線関係のパーツが特徴だった。高度経済成長時には家電の大型店が続々と登場したし、オーディオブームというのもあった。日本のマイコン黎明期は電気メーカーのパーツの部門など脇役的なところからスタートして、それはそのままアキバの店々の隆盛につながっていった。その後サブカル文化のマーケットになっていくのだが、これらに共通しているのはまだ世界的に未発達の分野で、流通が確立していない新しい分野の人がアキバを利用していたことがわかる。まさに時代のトレンドをアキバは背負っていた。
しかしコンピュータのハード・ソフト両面でアキバの役割は終わったようである。ノートPCにしろスマホ・タブレットにしろ、商品としてがっちり出来上がりすぎていて、マニアが勝手に手の出しようがないものは、アキバには向かないのである。古い言い方でプロ・シューマーという作り手と利用者が混在するような世界が日本では少なくなってきて、スマホならやっぱりiPhoneがイイなというような単なる消費者が増えてきた。だから日本の社会全体としては怪しいがオモシロいという世界は好まれなくなっているような気がする。その分だけ既存の商品に満足しないゲリラ的挑戦者も減ってしまったのだろう。
かつて日本が松下、ソニー、ホンダ、というような中小企業から世界企業にまで登り詰める会社を輩出したようなことが今後もあるのだろうか?これらの会社の登場した頃の物質的貧しさは今の世界には無い。今や工業生産能力は世界的に過剰なほどあって、どんなユニークなことを始めても生産は水平分業になって拡散し、売上を独り占めは出来ないようになってしまった。こういったモノつくりではゲリラは挑戦できなくなったのである。
このことをアメリカは日本よりも先に経験し、ソフトや知財権の戦略をたてたのだし、それを国益にしようと情報スーパーハイウェイ構想が作られた。国益だから、世界に向けたIT戦略であって、たとえ国内でWindowsが独禁法に引っかかるとしても国益を考えればMicrosoftを縛るわけにはいかなかったように、今はAmazonを縛らないことになるのだろう。
こうしたアメリカの戦略と正面からぶつかることをしていても、勝ち目はないどころか、追いつけもしないで消耗してしまう。
むしろ日本は国家戦略などは期待しないでゲリラ的に世界を目指す方がよいし、それができるだけの民力もある。GoogleMapも日本が一番デキがよいと思うが、それは日本の民間の地図出版の蓄積があるからだ。ゲリラ的というのはそうした民間企業のコラボで出来そうなことがいろいろあるからで、コンテンツビジネスの世界戦略といってもハリウッドと競うような大作主義をする必要は無い。韓国や中国は財閥的な大組織にしか開発力がないし、製鉄・造船をやっていたような勢いでIT分野も入ってくるので、日本の民間が正面から戦って勝てるわけが無いのが日本家電の凋落の要因である。
しかしコンテンツビジネスでは、韓国や中国の制作現場も見て回ったが、製鉄・造船・自動車・半導体のような組織だったマネジメントは役に立たない。コンテンツビジネスをサブカルに限定しないで世界的な展開ができるように、あるいはまずアジアでの展開が出来るようにすることをもっと真剣に考えてはどうだろうか。