投稿日: Oct 13, 2010 11:24:1 PM
救出映像で熱くなった方へ
チリ北部の鉱山で8月に落盤事故があり、作業員33人が地下700mの避難所に閉じ込めらたが、70日目にあたる10月13日からカプセル作戦で救出が始まった。地下の避難所にもモニタカメラが入っているし、地上では世界中の報道陣が集まっている中で、世界の人が気遣っていた救出作業がナマ中継された。彼らは70日も待たされたのかということでこの間のいろいろな辛さに思いが巡っていたのが、作業員がカプセルから出てきて元気そうな姿を見ると、本人も周囲もすべてのものが喜びに変わるという劇的な映像が流れた。当然新聞やWebの記事もあるが、やはり映像の力は大きい。すでに映画化の話は進んでいて、その儲けは33人で分け合うことまで決まっているようだ。どこでそんな話し合いがされていたのか。
落盤の事故が起こった段階でtwitter上で無事救出を祈る書き込みが多くされた。掘削ドリルの先に小さな紙に書かれた作業員の手紙が巻きつけられていて、中の全員が無事であることが地下700mから地上に伝わった。当時この紙片を広げるところから映像はあった。世界中から知恵が集められて救出作戦がたてられ、その作業に2ヶ月かかるということで世界中の人が安否を気遣った。この2ヶ月の間も地下への連絡をとりながら様子を伝え、また家族のことなどいろいろなニュースが流れたので、世界の人の意識からこの落盤事故が消えることはなかった。その間に映画化とか書籍化の話も進んだのである。
さて昨日救出がまじかに迫った段階で、暗いところから急に明るいところに出てきて目を傷める云々という話があって、サングラスをつけて出てくるというが、そりゃヘンだと思った。地上でカプセルを取り上げるところをテントで覆って薄暗くすればいいじゃないか。どうもそうではなく、アメリカのOAKLEYがレーダーパスという偏光レンズのサングラスを寄贈しているのである。これはAmazon.comでは¥24,700で買える。そのうち事故被害者は企業のロゴ入りゼッケンをつけて救出されるようになるかもしれない。またtwitter上でも救出何人目というのをtweetしている人が多くいて、世界が固唾を呑んで見守っていることはわかるのだけども、妻と愛人の板ばさみになっている人は何番目か、みたいな書き込みもある。これも事前に作業員のいろいろなニュースが流れてゴシップ化した部分である。
また救出前には政治家がTVに映りたがっていることがよくわかる。やはり大統領の支持率もTVに映れば映るほど高くなるようである。ボリビアの大統領もやってきた。しかし報道の本質はそのような空騒ぎを起こすことではないはずだ。私はかつて繰り返された日本の炭鉱事故を思い出した。過酷で危険な労働である。今日では最も非人間的な仕事なのかもしれない。感動のドラマを作って終わりにするようなものではないと思う。