投稿日: Mar 15, 2012 11:59:28 PM
日本のオーディオマニアは袋小路にはまりがちと思う方へ
子供の部屋に1万円弱の小さなモニタスピーカーがあって、携帯プレーヤにつないで音楽を聴いているが、それが大変音がよくて感心した。若い頃にステレオのスピーカーボックスをあれこれ作っては壊していた時と比べると、ミニコンポサイズのスピーカーや内蔵されているICアンプには脱帽せざるを得ない。これは最近突然に起こった変化ではなく、かつてカーオーディオを部屋の中に設置したことがあったが、その時もカーオーディオが思ったよりもよい音で残念な思いをした。ともすると手造り至上主義からすると、工業製品に負けることをよしとはせず、一風変わった工夫へと走り勝ちであるが、それはいじくって遊んでいるだけで、よい結果は出ていないことが多い。
どうも大量生産の工業製品に屈したくないという感情が、超高価なシニア向けオーディオ市場を支えているように思える。つまりコストパフォーマンスを無視したような高価なものに、工業製品ではなしえなかった手造りの良さが残っているはずだ、という妄想である。しかしこういった指向は袋小路に入り込んでしまうので、そこから新たな応用が産まれることはない。ボーズ感性工学云々というところから、ひとつの箱にいろいろな角度を向いたスピーカーが沢山つけられていて、それを壁から少し離して置くと、結構サラウンド的な音の反響がえられるものがあったが、日本のオーディオ雑誌はこういったものは取り上げない。今に至るまであくまで左右にスピーカーを配置した世界に限定している。
しかし実際に生の音楽がある場においては、左右から音が出ているわけではないし、むしろホールであれクラブハウスであれ、部屋の構造が音の響きなどを決めているので、音響システムは閉鎖空間のサイズや構造をシミュレーションするものでなければならないはずだ。これを万能の音響システムのように設計するのか、あるいは限定された空間を対象に設計するのかということは、音楽的な趣味とともに異なってくる。だから信号の入出力を計測して一律にシステムの優劣を決めることはナンセンスである。つまり個々音源の音楽性を踏まえたものがマニアの要求を満たすものとなるのだろう。
音楽ファンとして凝るべき部分でオーディオシステムの占める領域は、実は一部分であって、聞く期待感を作る演出とか、健康状態とかも大きくかかわっている。例えばおいしく食事をするというのは、必ずしも食材の問題ではなく、皿とか雰囲気などTPOが関係しているのと同じである。おなかもすいている必要があるし、ウンチクで期待が膨らむことも必要である。これらがすべてマニアの追及すべき音楽性の外縁にあり、それは商業的なサービスにもつながる。ライブハウスの演奏の間にレコードをかけるなら、それは金メッキのコネクタを使っているかどうかよりも、こういった演出を踏まえているかどうかの方が重要なはずだ。
おそらく、音楽をenjoyする方法は、ユビキタスコンピューティングの中で変わってくると思う。