投稿日: Feb 23, 2011 11:27:37 PM
本気で脱皮できるのは誰かと思う方へ
出版物のもつ意味は日本でもアメリカでも似たものだと思うが、出版経営とか業界は日本とアメリカでは異なる。今出版の課題として論じられていることは日本固有の要素と共通の要素がうまく仕分けられてい無いままのように思える。世界の出版ビジネスの動向がどんなものか知っている人は少ないだろうが、今ではEBook2.0Forumのようなサイトもあって、今後の出版をどう考えるかのヒントになる。日本の大きな出版社には現状維持の姿勢が強かったが、講談社の社長が替わると変化が起きるのかな?記事『作品-出版-読者』では、出版社と著者のスタンスの違いを書いたが、マスプロダクツで経営が成り立っている大手出版社にとっては、金の成る木としての大作家のマネージャ機能が重要だろう。音楽のメジャーレーベルとマイナーレーベルの違いのように、マイナーから人材を発掘してメジャーで活躍させればよいので、自ら土地を耕す必要はないと考えるだろう。
しかしマネージャ機能は出版の役割とは異なるもので、出版資産を生かすことには直接はつながらず、紙の出版が減少しても大出版社がに伴って本気で脱皮する方向には進まないだろう。よく出版のコンピタンスで今後も必要なこととして編集能力が挙がるが、これだけでは曖昧なのでもっと分解して考えるべきだ。「キュレータ」は編集よりももっと専門能力とか権威が必要なものだが、現場的にいえば、雑誌「キネマ旬報」とか「野球小僧」のように情報収集に徹して、またその分野の目利きの人々の人脈をもっておくことが編集の機能の中ではキュレーションに近い。しかし徹底した情報収集 は編集プロダクションに依存している出版社も少なからずある。
本しか商品がないと、いくら徹底した情報収集をしても売り上げ拡大にならないので、ゴルフダイジェストオンラインのように雑誌のブランドを元にEC化のような展開がある。このためには社外にパートナーが必要かもしれないが、出版が情報しか商材にならないのに対して、物販やサービスがうまくリンクすると「カテゴリーキラー」になれる。単なるオンラインショップから出発して慌ててコンテンツを付け足したWebやケータイメディアよりはずっと強力なビジネスができるだろうし、ここでの商材のカテゴリーわけこそ過去からやってきた出版の企画が活きるところともいえる。
この雑誌などのカテゴリ化とは現実のニッチな世界の可視化のことであり、その世界におけるコンテンツの発掘を行い、情報および関連商材を含めて再構成しているわけだ。過去の出版では趣味的な、あるいは価値観に基づくカテゴライズが多かったが、情報誌の時代になるとマーケティング視点でのカテゴライズで経営を伸ばすようになって、旧来の出版社は差をつけられてしまった。雑誌が下降した際には情報誌はネットメディアに展開できたのに、出版社はそうできなかった。つまり出版社は仕事の結果としての出版物にこだわったのだが、むしろ出版物を作るのに必要だったステークホルダをオーガナイズする能力を生かせば、メディアに左右されないビジネスに行けるはずである。これにマーケティングの資質が加われば、話題としても旬で金もまわるカテゴリーでのメディアビジネスになるのだろう。
今上記のカテゴリのことをソーシャルとか呼んだりしている。そんな時代だから、デジタルメディアに土俵を遷して、情報収集→オーガナイズ→マルチ展開 と進める可能性がある。
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