投稿日: Mar 06, 2015 1:25:3 AM
ビジネスモデルという言葉がしばしば聞かれるが、そもそも「モデル化」というような抽象思考は不得意な日本人は多い。ビジネスと言っても、何を売ったら儲かるかとか、値段はいくらか、といった話に終始していて、マーケティングというところまでも至っていないことが現状であることは、前職で身に染みて感じたことである。
前職の組織の創立者である塚田益男氏は東京大学農学部農業経済学科の出身で、2003年12月31日に永眠されたのだが、最後まで印刷の新しいビジネスモデルのことを思案しておられた。それは残された者への宿題となって、21世紀の印刷を取り巻く環境についていろいろ調べて、2005年から2015年に向けて日本の印刷需要は半減するという仮説を立てて、あらためて脱印刷や拡印刷の戦略をたてた。
このことは何も新しいことではなく、20世紀末から未来予測として叫ばれていたことの整理に過ぎない。デジタル印刷でもデジタルメディアでも萌芽はすでにあったからである。しかしなかったのがビジネスモデルだった。つまりお金が回り続け仕事が発展していく仕組みが見えないということだった。今も変わりはないだろう。
特に印刷のような紙の物量の増減がビジネスの指標であった世界からすると、情報加工とかコンテンツといった物量が体感できない世界の経済化は困難を極める。はっきり言うと印刷の経営者には情報やコンテンツ分野のビジネスモデルはできないことだと思う。
上の図は、記事『学習効果を高める』で示した教材の量と質の関係図であるが、従来からここには多様な印刷物があって、印刷会社は教科書出版社から仕事をもらって出版印刷と、問題集の出版社からもらうところ、プリントなどの印刷をするところ、あるいはコピーサービスなどいろんな業態に別れて受注合戦をしている。
しかし受講生からすると、例えば微積分を学ぶのに必要な教材は図の左から右まで一貫したものでなければならない。ほぼ同じような図版が教科書にも問題集にもプリントにもあるのだが、教材の図版や説明文は印刷物を作るところが異なればそれぞれ別に作られている。これは壮大な無駄をしていることになる。そこで通信教育産業はこれらコンテンツをトータルに扱うようになって伸びた。
つまり紙とかデジタルとかの問題ではなく、教材の制作というところでビジネスをしたいならば、従来の紙媒体別のどこかの中だけで頑張っても、教育をする側にも教育される側にも役に立つものとはならないだろう。これから先のデジタル・ネットでの活用を考えると、教材コンテンツをいろんな教育局面で使えるようにするデータベースのようなものとか、いろいろな局面に合わせて機動的に配信するサービスとか、教師側の要請でカスタマイズするサービスとか、従来のDTP制作や印刷とは異なるサービスが求められている。
教材とか学習メディアは教える側と学ぶ側の良い関係を作って、学習効果を高める役目があるので、個々の媒体作りよりも先に教育現場の問題解決を考える姿勢でなければ、ビジネスが継続的に発展していくことにはならないだろう。要するに顧客視点で考えなければビジネスモデルにはならないのである。
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