投稿日: Aug 30, 2014 1:26:43 AM
SNSの黄昏
この夏、寄付行為のプロモーションとしてアイスバケットを自分で被る画像を投稿して、不幸の手紙のように連鎖的にSNSで拡散するのが流行った。これによって寄付額は昨夏の10倍以上になったという。寄付の訴えは何も変わってはいないものの、SNSで何か面白いことはないかと待ち構えている大衆の前でアイスバケットを演じると、認知度の高まりは凄いものであった。
こういうやり方の評価は分かれている。寄付が必要なことの本質が伝わっていないではないかという意見と、本質はともかく結果的に金が多く集まるならよいという意見である。またバカ騒ぎに乗じて社会活動をすることは矛盾があるという意見もある。これは単にバカ騒ぎを助長していることにしかならないからだ。別の言い方をするとSNSができることはバカ騒ぎの助長なのである。
アイスバケットというバカ騒ぎ自体は、いかにもアメリカ的なもので、アメリカ人がやっているうちは何の違和感もないのだが、ブツブツいう意見がある日本で行われていると、何でこんなことをしなければならないのかと、何か痛々しいものを感じることもある。でも指名された人がやらざるを得なくなっているのはSNSのせいである。
特にfacebookの「いいね」のようなリアクションは、思考した結果ではなく瞬間湯沸かし器的なものなので、SNS上の情報は直観的・情緒的な情報が優先的に表示・伝達されるような仕組みになっている。冒頭の寄付の成功でSNSは集金の役割を果たしたかのように見えても、社会活動の理解はスルーしてしまったことには問題を残していると思う。
また近年は「いいね」のようなリアクションで拡散することを目的としたバイラルメディアが急速に増えて、過去から何度も話題になっている面白動画や投稿写真が日常的に頻繁にfacebook上に繰り返し登場するようになった。これらを見ている方は一息つくのかもしれないが、バイラルメディアと称するサイトはYouTubeリンクや静止画のコピペをしているだけで小銭が稼げる目的でやっているので、Web全体としてもfacebookとしても情報の質が上がる方向には行かない。それでは紙メディアには追い付けないし、ネットメディアの衰退にもつながる。
要するにfacebookでもtwitterでも1次情報よりも2次情報・パクリ情報が横行するアルゴリズムになっていて、これらを淘汰させようとアルゴリズム開発しているのは検索エンジンであるという、ちぐはぐな状況がネット上に生まれている。目下のネットビジネスという点では利用者数・PV・トラフィックが個別企業にとっては重要なことはわかるが、多くのネット企業がその段階だけに留まっていて、先に何の共通ビジョンも持たなくなっているとすると大問題である。タダ乗りビジネスに未来はない。
やはりネットは1次情報が容易に流通できて、それをフィルタリングするアルゴリズムが開発されるべきであろう。
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