投稿日: Oct 29, 2013 2:1:47 AM
市場は残酷なもの
人の味覚としてはエビの種類や産地を判定する能力を持ち合わせてはいないから、調理品にそのような食材の属性を表示する必要は何もないのだが、大脳が余計なことをしているので、属性で判断して優れていれば、高い値段に見合うと考えてしまう。誠に愚かなことであるが、これが人間の宿命であるのだろう。しかしこれはアナログ世界の中でのことで、人が求めるものの供給が限られているから、そうではないものを大脳に「同じように素晴らしいだろう」と思わせる方法としてプロモーションとかコピーが発達した。
しかしデジタルでは超一流があれば、無限にコピーが可能なので、誰でも最高に評価されているものを手に入れることができる。昔、アナログLPレコードの時代には同じ音源でも、日本盤・英国盤・米国盤を買い集めて、どれが音質がよいかを比べる人もいたのだが、デジタルのダウンロードならレコード盤生産の品質には左右されなくなる。ビデオテープのような劣化もない。世界中何処でも何時でも最高品質のデジタルコンテンツが容易に手に入るという点では、大脳的には満足な時代になりつつある。
これをコンテンツ供給側のビジネスとして考えると、アナログの時は英国盤が品切れなら米国盤を買うとか、少々高くても日本盤を買うなどの代替が行われた。写真を撮るのにKodakフィルムが品切れならFujiかKonicaを買うとか、流通の限界とかリスクとかがあって、一定程度の代替品市場が存在し、市場占有率が2位や3位のビジネスもそれなりに成り立った。日本の家電屋も系列ショップを発展させたがために、お互いに他社相当品・互換品などを供給していた。こういった業界構造がデジタルになると、1位メーカーだけが皆に供給できるので、2位3位が成立しなくなるのである。
日本語ワープロソフトの開発のことは随分いろいろあったが、国内では一太郎が寡占的になり、その後 Microsoft Word が世界を席巻するようになって、1位と2位との間の格差は極端に開いてしまった。インターネット時代になって検索エンジンはいろいろ作られたが、Googleが圧倒的にシェアを握り、他に何処に2位が居るのか見渡してもわからないほどになった。これはソフト開発全般にいえることで、オリンピックの1位2位3位のような階段状の表彰台はデジタルではなくなってしまった。
したがって、プログラマーの世界も1位企業に奉公する貴族のような暮らしの人と、時給が万年同じのアルバイト・派遣社員という小作農のような人たちに分かれてしまっている。今はこの2位以下の脱落の時代であるといえるが、これからこのギャップで生きていく何らかのビジネスのやり方が出てくるのであろうか?