投稿日: Oct 05, 2010 11:38:55 PM
本当に人はソーシャルに信頼を置いているのかと思う方へ
オバマ大統領が苦境に立たされている。2年前の大統領選挙では草の根運動の支持により、上院議員1期の経験しかない、しかも黒人の大統領選出という奇跡的な出来事があった。当然ながらオバマ大統領自身の資質が主な理由であるが、過去のマスメディアを通じて国民を巻き込む選挙戦だけではなく、ソーシャルメディアが国民の判断に大きく影響したといわれ、ソーシャルメディア自体もこれを弾みに伸びて、その後のブームになっている。記事『メディアの大変革が進行中』で述べたようにアメリカは社会的な『争点』がそれぞれの時代のメディアを作り出し、そのコンテンツとしてのジャーナリストは旧メディアから新メディアに移行しながら仕事をする歴史があった。ちょうどオバマ氏立候補の際にはソーシャルメディアにピンときた優秀なスタッフがメディア戦略を建てた。
ところが今回の中間選挙では状況が一変し、特に国民皆保険制度に対しては猛反対が起こって、デラウェア州の共和党予備選では、ペイリン女史もどきのオドネルさんがティーパーティー(保守系草の根運動)の支援により、共和党本命候補を破る番狂わせがあった。実は今活躍しているネット上のソーシャルメディアもHuffPostもオバマとともに頭角を現したもので民主党寄りの論調が多く、ティーパーティーのことはそれほど真剣に採り上げてこなかったと思う。ペイリンのFacebookなどは内容が2ch的で物笑いの種にしていたのに、モラル的にガチガチの候補がこれほどの得票をするとは、ソーシャルメディア側の予測を超える事態となった。
これはおそらく新聞やTVのマスメディアに情報を依存している高齢の古い中流層が動力になって、自分達の跡継ぎを捜し求めている姿であろう。自分と同じ高齢者候補ではなく、次世代の選挙戦に多くの支援をしているのだろう。それはソーシャルメディアというよりはドブ板(アメリカではなんと言うのか)とか辻説法などの古典的努力の成果である。しかし、オバマを支えたボランティア達がそれら古いモラルに対してこの間に有効な論争を出来なかったのはなぜだろうか? NHK報道は学生さんは自分の就職を探すのが大変でオバマ支持どころではない…みたいなことを言っていたが、それは説明になっていない。学生にとってオバマは何だったのか?これもソーシャルメディアでは浮かび上がっていない。
表面的には『小さな政府派』が国民皆保険に反対しているものだが、その裏にはアメリカの大統領選挙を2分する課題である、銃規制、妊娠中絶、同性婚、など古いアメリカのアイデンティティに関するセンチメントが関係しているのは明らかだ。これらの問題の腑分けと議論をなしに、いくら政策議論で損得を訴えても2大政党の間で振り子のように政権交代を繰り返すだけであろう。こういったアメリカ人の琴線に触れるところで機能するメディアとはどのようなものなのか、というのが現実的な課題だ。我々はそれはこの間発達してきたソーシャルメディアではないかと考えたのが、まだその域には達していたないことが明白になりつつある。