投稿日: Mar 31, 2012 1:9:51 AM
日本人は不安がつきまとうと思う方へ
セミナー『出版を最先端ビジネスにしたAmazon 』のディスカッションでいろいろ話されたテーマに、ソーシャルリーディングは電子書籍の伸びにプラスになるのだろうか、という疑問が目立った。鎌田氏は日本とアメリカの教育事情の違いに言及して、日本では教育の場での読書とか読書会が滅んでしまったのに、アメリカでは続いていることを背景の違いとして説明した。日本の基礎教育で読書というと感想文を書かせるとか、作者の意図は何かというような問題に結びついて、子供の読書に掉さしている。大学生の読む本の量もアメリカは日本の倍あるし、大人になってもブッククラブの活動があって、こういう土台がソーシャルリーディングの機能を産み出したといえる。
昨年アメリカで伸びた分野のトップにeBookがあったわけだが、3-4位にはeLearnigがあって、これらはダイレクトに連携しているわけではないにしても、eLearnigの習慣はeBookを押し上げることは推測できる。実際にeLearnigの中に読書会を組み込んでいるところはあるので、その場合は紙の本では掲示板のような読後コメントの書き込みシステムを用意しなければならない。それならソーシャルリーディングのできるeBookを最初から使う方がよいだろう。鎌田氏はピアソン社が教育出版とeLearnigを融合していて、両方を包含したコンテンツ作りをしていることを話した。
ソーシャルリーディングではネガティブな書き込みもあってマイナス面があるのではないかという不安も日本人にはある。しかしWebで利用者の声などフィードバックを公開しているところでも、全うなビジネスをしているところは、殆どアラシはないという。ケンコーコムの話では投稿を監視していて問題になるのはpostするところを間違えたものくらいだった。Amazonでも電子書籍でもレビューでのやらせ、つまりステマというものは入り込むが、読書中にそんなことをする人はいないだろうし、何か問題があるとすると書籍のコンテンツが不適切などの商品力の問題だろう。
eBookに限らず、今までの紙媒体とかパッケージ媒体は売って代金回収したら、あとは知らんフリができたのが、良くも悪くも後々までフィードバックが続くのがネット社会である。ニコニコ静画ではコミックにも画面にかぶせてコメントできるサービスをしているが、最初は作者が嫌がるのではないかと出版社に不安があったものの、実際に「スゲー」とか書き込まれると、作者にとってはこのコマで読者はこのように反応するのかということが見えて、刺激になったという。つまりソーシャルリーディングは作者と読者をつなぐコミュニケーションになるということだ。
すべての出版物がソーシャルになる必要はなく、クリエイティブ性が高く読者とは全然違う地平から押し出すコンテンツはいつもあるはずだが、読者とのコミュニケーションを重視するタイプのコンテンツにとっては、ソーシャルリーディングは出版を高い評価のものに変えていくきっかけになるのだろう。