投稿日: Dec 22, 2011 12:45:18 AM
商業ベースには足りないものを感じる方へ
年末で世の中の仕事納めの後に始まるものにコミケがあり、今年のコミックマーケット81は、東京ビッグサイトにて2011年12月29日(木)~31日(土)に開催される。その壮大なお祭り騒ぎは必ずニュースになるが、商業的にみると不思議なイベントで、果たして儲かっている人がどれだけ居るのかよくわからない。元々が同人誌サークルの学園祭のようなものが巨大化したもので、無給のボランティアが組織されて働いていて、ここに出展するところも過半数は赤字である。そもそも出展するテーブル一つが1万円もしないものなので、個人でも出せるし、需給のバランスがとれないから、審査とか抽選で絞り込まれる。特に企業ブースは最初から場所が決まっていて、そこの割り振りは抽選で決まるので商業的に大きくはならない仕組みだ。
確か35周年をしていたので、1975年あたりから始まっているイベントで、最初は漫研の集まりのようなものだったが、米澤嘉博氏がコミックマーケット準備会の代表になってから拡大していった。米澤氏については、明治大学が米澤の蔵書や漫画資料を含む「米沢嘉博記念図書館」を開設するほど、日本のマンガの評論家・研究家として第一人者と認められている。以前雑誌に原稿を依頼したことがあるが、人柄はよく、現在3000人を超えるコミケ準備委員会のボランティアさんたちもそれを受け継いでいると考えられる。運営のノウハウもこの組織の中にあり、これに関連した人たちが他の地方でもイベントを行ったりしている。
つまりコミケは東京ビッグサイトで年中行われているビジネスショウとは異なり、文化的な事業ということができる。だから無名のアマチュアが集まるだけでなく、プロの漫画家やイラストレータもコミケ限定版などを作って出展し、人気クリエータの場合初日の最初に早々と売り切って自分は他の出展を見て回るような、出展と参加がほぼフラットなイベントになっていて、企業の参加もそれに合わせたボランティア精神を持たないと浮いてしまう。だからコミケ限定グッズを作ったりバッグを無料で配るようなことをしている。こういったプレミアモノを確実にゲットするために、事前に出展の確認をしたり順路を考えたりすることが重要になり、その情報もネットで出回っている。出展サークルは35000ほどあり、とても準備無しに突然会場に行って見て回れるものではない。
こういった規模のイベントが毎回整然と行われるのは日本の特性かもしれない。35周年で出展者にアンケートをとった報告があったが、回答率が95%ほどあったと思う。これもコミケの結束をあらわすものといえるだろう。この世界と商業出版のマンガの世界は過去にはオリが悪かった。それは同人誌が商業マンガのパロディが多く著作権問題云々が避けられなかったからであろう。しかし次第にコミケもオリジナルが増えて、これで食っていけるクリエータも登場してきた。赤字サークルが60%と言ったが、40%は黒字化しているのである。それは1000部以上売れるところが40%あることと関係しているかもしれない。つまり会場で売買される同人冊子のうち400万部(!!)ほどは印刷代の採算はとれているかもしれないのである。
各商業出版社は人気作家、人気マンガ、人気キャラクタを押さえているので独自のイベントを行っている。しかしそこに含まれない予備軍が大きく育って、今までと異なるマンガの産業化が興りそうな気配もある。コミケは冊子やグッズというリアルな取引が主体だが、デジタルのクリエイトからデジタルの流通につながっていく次世代デジタルコミケのようなものがありえるだろう。