投稿日: Nov 11, 2015 1:0:59 AM
新聞の1面に電池の日のバナー(?)広告のようなものが載っていた。どうもバッテリーの日というのが別にある(12月12日)ようで、11月11日からの1か月が電池月間とか言うそうだ。エレクトロニクス分野はマイクロ化していったので、家電で交流100Vが必要なものは洗濯機やクーラーなどの大きな動力や熱源だけで、あとは大抵直流の低い電圧でも使えるものになってしまった。だから自動車用の電気器具のように12Vのバッテリーで置き換えが可能になりつつある。しかしそういう大きなトレンドに日本の家電業界はなかなかついていけていないのが現状である。
ルンバのような充電式の自動掃除機も日本が逃した分野だし、マキタの充電式手動掃除機も家電外に冠をとられている。もっと小さいものではモバイルなガジェットも最初は世界に先行していた日本だけれども、大量生産時代には取り残されてしまった。その過程は容易に分析できる。要するに消費者とのトラブルを恐れるかどうかである。
ウチでは家族それぞれがiPodを使っていたが、みんなバッテリーが死んでしまった。そんな中途半端な製品は日本のメーカーなら作らないだろう。つまり電池に無理をかける設計とか、製品テストが十分でないとか、そういう瑕疵があっても目をつぶって先行マーケティング的にタイミングよく商品を投入することは、日本の商道徳では考えられなくなっているからではないか。
iPod以外、子供のオモチャも含めて、電池を使う商品の多くは使い捨て的な面があって、10年使うようには考えられていない気がする。また大手メーカー以外のアジアの無名電池工場の製品は、よく液漏れを起こして機器を台無しにする。リチウムイオン電池でも爆発しそうに膨らむことがしばしばある。
ちゃんとした製品でもメモリには10時間分のコンテンツが入るのに電池は5時間しか持たない、なんてものもあった。市場にあふれるガジェットの多くはそのようなものではあるけれども、生活者はうすうすは感じていて、やはり雑な設計や粗悪なものは敬遠されてしまうし、ルンバのようなものでもバッテーリーの買い替えにあまりにもコストや手間暇がかかると、もっと優れたものを人々は求めるようになるだろう。
スマホも2年で買い替えるという習慣はいつまで続くのだろうか?自動車でいえば仕事や生活で必須のものであっても、新車がでたからといって律儀に買い替える人はどんどん減っている。つまり実用品の世界は薬でいうところのゼネリックな製品になっていくであろう。電池を使う製品は新陳代謝の盛んな使い捨て時代から、汎用品を目指して設計する日が来るのではないかと思う。しかしそれは相当先の話だ。
リチウム電池でも改良すべきところは多くあるし、リチウムの代替するものがあれば大きな可能性をもつ。しかし電池のイノベーションの夢が再び無理な製品を産み出すという悪循環もある。電池の性能以上の機能を喧伝するものはウェアラブル分野などに顕著に出てくるであろう。こういう堂々巡りの中で夢ばかり見る様子は錬金術と似ている気がする。
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