投稿日: Jul 03, 2015 12:44:49 AM
日本の家屋の中がどうなっているかは、おそらく世代ごとに異なっていて、若い人は家の中にモノを詰めこまないとか、本棚が無いとか、車を買わないとか、軽い生活を平気でするようになった。もっと上の世代は、サーフボードもあればスキーのセットも、ゴルフのセットも揃えたがった世代だったかもしれない。もっと前の世代は基本的な家電の充実を目指していたとか、何らかのパターンがありそうだ。
その世代の家電フェッチがシニア・オーディオという怪しい世界を作った。怪しいというのは、一見科学的でも実はあまり根拠がないだろうと思えるからである。これらは若い世代には引き継がれないものであって、実際には若い人が買う安い音響装置でも十分な品質の音が出ていることの証明ではないかと思う。シニア・オーディオのようなものが一般家庭に復活することはあり得ないだろう。
この世代は、こだわりとか、薀蓄のネタを必要としていたので、特定分野に集中して必要以上の投資をする傾向がみられた。
そういう人たちが高齢になって身辺整理を迫られたり遺品整理ということになって、今ヤフオクなどをみると家の不要物がいっぱい出品されている。それらを眺めるにつけ、日本のサラリーマン・エンジニア達が日々どんなことに取り組んできていたのかが思い返される。よく言われるように、横並び思想と、微差の競争、というのが最初の印象だ。オーディオもヤフオクに並んでいるものの殆どは横並びで、またカートリッジとか針など製品の肝になる部品はOEMだらけで、家電メーカーがやっていたことは箱つくり中心であった。
結局はオーディオの世界も、自社のポリシーを貫いて、良い製品を末永く提供しようとしたところが経営の発展という点では恵まれず、すぐ真似をする会社の方が稼いでいたなと改めて思える。
私も自分の音響装置の修理や改造のために部品が必要になって、こういっったオークションでジャンクを買うことがたびたびあるのだが、新品で10万クラスのものが1000円になっていたりする、だれも修理して使おうとしないのだな、と思うし、専業メーカーが成り立たない日本では、今後も何かヒットがあっても一時的な経営でしかないのかもしれないと不安にも思う。
日本のモノつくりの問題は、そういう指向に適した経営ができないことであろう。だから宣伝文句の域を出ないで、実際に跡を継ぐ人は減っていく。ビデオはまだデジタルになっても世界的に見て1日の長はあると思うが、オーディオはヘッドフォンとPAの大音響に技術が2極化して、日本の若者が取り組む様子があまり見られないような気がする。何もモノにコダワリがないというのも寂しい気がするものだが…
Top → Articles デジタルメディアビジネスの記事 過去記事→Archive