投稿日: Jul 09, 2012 12:26:9 AM
デュッセルドルフ → フランクフルト
フランクフルト・ブックフェアのボース総裁を迎えて行った7月6日(金)の『グローバリゼーションを目指す世界の出版動向と日本』については、予想をはるかに上回るメディア革命の話だったことを、記事『出版革命は、再びドイツから』に書いた。7月7日(土)には別の短いミーティングをしたのだが、このメディア革命の推進は単なるイベント業者がするような規模のものではなく、もっと複雑な仕組みが背景にあると理解した。しかもそれは目下のビジネスの伸びや売り上げを競うアメリカ的なベンチャーとは対極にある、長期で着実な戦略戦術であって、日本としては両方とも必要であると感じた。
印刷分野ではデュセルドルフで行われるDrupaが印刷出版紙加工の世界最大の展示会で、そこを観察していると印刷の進歩がわかるようなものであった。これは近代印刷技術の発祥の地が傍にあるからということではなく、デュセルドルフ市がメッセ事業に力を入れていて、そのために専門家を抱えていて、Drupaでいえば次回、次々回くらいにわたる10年後のプランをもっていて、そのために世界中を駆け回っている。ブックフェアのボース総裁も日本では三木谷氏野間氏に会い、日本を離れたあとも某国の文部大臣と会うとか、活動が全世界に及ぶ。とても日本で展示会場を借りて営業で埋め合わせしている業者のすることとは異なり、日本人には理解しがたいビジネスかもしれないほど、スケールの大きなプランである。しかしこれは誰か個人が思いついたものではなく、行政の文化政策の一環にもなっている。
この写真は佐田野さんのものを拝借したのだが、われわれから見えるフランクフルトブックフェアと平行してどのようなことが進んでいるのかという説明がされたときのものである。ブックフェアの各イベント(最左列)と、ドイツの文化振興(左2列目)と、ITメディア教育(左3列目)が同格にある。このITメディア教育がオープン・パブリッシング・フォーラムと通じるところが多いものであった。こういった複合的な施策はどこの国でも考えられるのだろうが、ドイツで驚いた点はボース総裁のように民間で優秀な人を引き抜いてこういった施策のリーダーにしているところであり、事実そのような人をたてるからこそ、民間企業を巻き込んでひっぱって行くことができるのだと思った。
まあドイツの中にもいろんな産業があって、それぞれ世界戦略というのがたてられているのであろうが、印刷のDrupaが随分と下降してしまって、あまりやりようがなくなってきたことと対照に、フランクフルト・ブックフェアをテコとしてメディアビジネスの世界的中心地を目指して注力されつつあることは理解できた。ドイツ人の気質のような、キチッと枠組みを作ってその中をコツコツ積み上げる方法がどこにでも当てはまるわけではないだろうが、この方法の強みが発揮される点として、ビジネスのルールが整備されて、小さい企業でもそれなりに持続的にメディアビジネスができるようになるのだろう。それはアメリカ的な一部の勝者だけが寡占的にビジネスを成り立たせるモデルに対抗するものになるはずだ。
電子出版再構築研究会 名称:オープン・パブリッシング・フォーラム Ebook2.0 Forumと共同開催