投稿日: Apr 19, 2010 2:36:43 AM
デジタルメディアに進む理由が見えない方へ
中西印刷の中西秀彦専務が、E-Bookと印刷業 (4):生き残りをかけた軟着陸戦略 で非常に正直なことをいっておられる。遡って読んでいただくと、電子書籍の抵抗勢力として既存の利権を最大限に確保することを直近の任務と考えておられることがわかる。印刷物制作の立場から、これを機会にデジタルに打って出るビジネスチャンスという見方は「きれい事」だという。中西氏もほんの少数の印刷会社はそれが可能であることを認めているが、多数にとっては既得権益を明確にして延命することが現実問題なのだろう。
デジタルのビジネスでは学ぶべきことが沢山あるのに、ビジネスの寿命は目処が立たないなどリスクが大きいのは、電子書籍に限らず何でもあてはまる。それでも敢えてデジタルに挑戦する人が後を絶たないのが今日だ。それは儲かる云々よりも自分にとってやる意味があることかどうかの問題でもある。特に若い人がやる気になる仕事を用意しなければ、その企業で働こうという意欲的な人は集まってこないだろう。企業にとって意欲的な若者が一人居るか居ないかで、会社の雰囲気は大きく変わってしまうことを感じたことはないだろうか。
デジタルメディアのビジネスは印刷よりもはるかに厳しいだろうが、印刷会社に既存のビジネスの権利の確保や拡大のノウハウが多くあるとも思えない。こちら の方も主張するからには法務的な勉強も、ロビー活動も新たなテーマになろう。既存の利権を最大化することに誰が一生懸命になって勉強し、得意先とネゴシエーションしにいくのであろうか?
それとも自社の戦略としてではなく、他人に働いてもらって業界単位で権益のネゴシエーションをしてもらいたいということだろうか? 今日誰が印刷業界を支援するというのだろうか? 従来印刷業界を対象にしていたメーカーの方が先に業態変革してしまったり、できないところは沈没していったではないか。
デジタルのよい点は一緒に動いてくれる若い人に期待できる点であり、企業経営の戦略としては重要であろうと思う。過去の資産がまだあるうちに若い有能な人に働く機会を提供するのも、今までご飯を食べさせてもらっていた者の義務ではないかと思う。