投稿日: Sep 01, 2012 1:22:41 AM
なぜAppleはFOXCONNに目をとめたのかと思う方へ
シャープの筆頭株主になる台湾の鴻海精密工業・富士康こと通称FOXCONNでいつも思い出すのはサトーパーツのことである。秋葉のガード下などには今でも細かい電子パーツを売っている店があって、その様子は私が電子工作少年であった頃と同じで、お小遣いでパーツを買い足してアンプや無線機その他いろんなものを作っていた。そういったパーツのカタログとしてサトーパーツのものは立派だった。
サトーパーツのカタログの後ろに佐藤零件のことが載っていて台湾に工場があり、パーツとは中国語で零件というんだということがわかった。こういった軽工業的なものは零細な工場でもできるのでアジアに広がっていった。鴻海精密工業傘下の FOXCONN のことはAT互換機のマザーボード上のパーツとして知った。パソコン部品は最初は通信系のものを流用していたが、メモリ、CPU、BUSなど接点数が非常に多いものは独自に作る必要があった。FOXCONNは文字道理このようなコネクタの供給者として成長した。
AT互換機も最初はアメリカの会社が作っていたが、前述のコネクタの接触不良には悩まされた。アメリカはやたらに空気が乾燥していて何とも無いのだが日本に持ってくるとたいていの金属の表面は何らかの皮膜ができてしまうからだ。これで使い物にならなくなったコンピュータ機器は数多くある。そこで世界に売るにはアジア製のパーツの方が信頼性が高くなった。AT互換機がムーアの法則でどんどん進化した時代にFOXCONNは経営拡大し、コネクタだけでなくマザーボードの製造から、PCのOEM生産へと拡大していった。
前述のマザーボード上のコネクタはキーパーツで、実はどこの町工場でも出来そうでありながら、安いマザーボードのものはすぐに傷んでトラブルの元となった。当時最も安いマザーボードはPCChipsという香港拠点のもので、そこもキーパーツのコネクタ類を自製していたが、寸法精度に問題があるのか何度もSIMMの抜き差しをすると調子が悪くなった。その点では FOXCONN はintelなどにも認めらた会社として日本やアメリカのメーカーのパートナーとなっていった。
今日alibabaなどでコネクタを検索すると佐藤零件も富士康も並んで出てきて、パナソニックが今でも電球のソケットを作っているのと同じだなと思う。サトーパーツは昔のままで健在である。以前から指摘しているが、FOXCONN はソニーや任天堂のゲーム機組み立てをしたことが今日のスマホ・タブレットの生産の源になっていて、FOXCONN はパーツといったちっぽけなものでもちゃんと全体機能を考えて設計する人が居たというのが成長の鍵だったと思う。