投稿日: Apr 04, 2013 12:6:10 AM
危ない橋を渡らなくなったと思う方へ
以前に情報規格でJIS関係の仕事をしていた時に思ったのだが、パソコンや家電品にはいろんな規格適合のマークがあって、例えば手元のノートパソコンのACアダプタには、IV、CE、GS、UL、CCC、PCT、NOM、PSE、その他10くらいのシンボルマークがついているのに、JISというのはない。当時安物のAT互換機の電源が火を噴くこともあったのに、日本で安全基準が作られないことは不思議だった。一方JISは5年後との見直しがあるので、古い規格の手入れに余念がなく忙しそうだった。JISはアジアからの輸入が急増することに何の手も打てなかったのである。
これは薬害エイズやアスベスト被害でも同じで、世界的なトレンド・トピックスよりも国は国内のステークホルダの話し合いが優先であった。このことは、記事『家電の復活はない』では家電の伸びを支えた需給ギャップが日米のライフスタイルの差からきていたことを書いたが、先進国という目標に追いつくことがばかりをしているうちに、「本来」とかそもそも何のためにやっているかが分からなくなってしまったものである。しかし何かしていないといけないので、あれこれやって発散してしまうもので、自分で目標設定ができないからそうなる。
前職の社団法人も元はといえば日本の業界がアメリカに追いつくという目標で作られたと感じた。そのおかげでアメリカの出張は多かったのだが、当時はそのことに官の助けがあって、頑張る中小企業に向けては税制優遇とかいろいろなメリットが時限立法化されていた。だから官の中小企業振興策にはまって革新も可能だった。この関係はちょうど21世紀に入るときに大体は無くなってしまって、皆が暗黙のうちに共通目標を抱く状態ではなくなった。それまでは結構小さい会社でも革新のための研究開発費をもっていたりしたのだが、目標を失うと同時に開発費も無くなっていった。
しかし前職の社団法人は今も存続しているように、日本各地・各業界に官主導時代の名残はある、というか形骸化して消滅するのを避けるために、何かしなければならない状態が続いている。それは得てして前述の、「本来」とかそもそも何のため、というのが欠落しがちで、それが家電でいえばガラパゴスを生み、行政の肥大化を支え、特殊法人というゾンビに餌を与えている。
民主党も仕分けやスリム化などを手がけようとしたが、日本人は上から下まで、何かしてなければ気がすまない気質があって惰性が続きやすいのだと思う。ある意味では物事を放棄しにくい性質を持っているともいえるが、それがアダの時代である。しかし惰性から次のものは産まれないのは明らかで、違う考え方を導入しなければならない。今まで惰性でやってきたものを皆やめろと言っているのではなく、成すべき事の優先順位を論理的に示す必要がある。その点は民主党は甘かったと思う。それはともかく、トップの意思決定が惰性になってしまっては、家電だけでなくどの業種でもオワリである。