投稿日: May 04, 2015 12:24:9 AM
ヤフオクを眺めていたら、コミケでかき集めてきたものを「自炊」してDVDに詰め込んで売っている人が居た。この行為の違法性云々をするとなると元資料の違法性云々にも抵触せざるを得ないから、当座はなんとなくやっていけるのではないかと考えたのだろう。あるいは自分の資料整理法として紙をすべてデジタルにしてしまったので、ついでに売ってみるかと思ったのかもしれない。おそらくこれを買う人は滅多に居ないだろう。索引や検索もなく、ただコンテンツを詰め込んだだけでは閲覧するのに不便極まりないからだ。
もしコミケモノのコピーが売れるのなら、コミケモノのホンモノも売れるだろう。これらは細々と売っているところはあるのだが、それらが新しい流通チャンネルを形成するところには至っていない。つまりロングテールの経済化はできていない。Web2.0が騒がれた10年ほど前にはロングテールの経済化も言われたのだが、ロングテールにはさまざまな誤解があったし、また検討も未熟であったように思う。一体どんな場合にロングテールが意味を持つのか?
誤解の最大のものとして「売れ筋よりもロングテールが売れるようになる」というような論理矛盾な記事まで生まれていた。ロングテールが経済化できるようになっても、以前と同じ様に売れ筋商品が売り上げの主要部分を占めるパレート図の構図は変わらないのである。だからamazonのようなところは売れ筋で稼ぐとともに、昔なら不良在庫として評価損にしなければならないロングテールも元がとれる程度のことだと考えればよい。
一方でロングテールの経済化を果たしたものもいろいろあって、オークションなどで倉庫のゴミを全部売りさばくようなこともその例になるだろう。オークションでは故人の所有物の処分も興味深い。この場合は、以前なら古本、古道具、書画、骨董などそれぞれ専門の業者に値踏みしてもらって、それぞれ二束三文でひきとってもらっていたのが、オールジャンルをヤフオクに出す人がいて、あるモノが他のどんなモノと一緒にあったのかわかるので、評価に役立つ。少なくとも誰かが所有していたということで、何らかの価値があったものだということにはなる。
これらはロングテールが新たな経済を作るというほどのことはないが、既存の古物商をバイパスするという点では革新であり、また売り手と買い手が直接つながることで、情報の喪失が防げるというメリットもある。
個人出版のようなものが何らかのロングテール販売の仕組みによって喰っていけるようになる可能性はないと思うが、廃棄して無価値になる、あるいは廃棄のためにマイナスの価値を持つモノが、多少でも価値を発揮して、破棄されずに誰かに受け継がれることは、商行為のモラル向上にもなるだろうと思う。
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