投稿日: Jul 04, 2013 12:22:49 AM
業者任せでいいのかと思う方へ
電子出版EXPOに行ってみて、改めて出版業界とはいっても業界のまとまりはないのだなということを感じた。この展示会は民間の業者が行っているものなので、業界ビジョンを実現するためとかのお題目はなく、単に出展費用をいただけるところにスペースを提供するビジネスであるので、まあトレンドのキーワードはならべつつも、全体の統一感というのは出ていない。その代弁として基調講演とかセミナーで業界のオピニオンリーダーが話をしているのだろうが、それと展示内容とはあまりリンクしていない。
記事『水面下のeBook』では電子出版EXPO展示会にはAmazonも楽天もAdobeも無いように思ったと書いたが、実際には楽天はブックフェアに、Adobeはコンテンツ制作配信展にあり、まあ各会場は連結しているので何らかの配慮で分散させたと思える。凸版印刷は電子出版EXPOに、大日本印刷はブックフェアに、というのも同様だろう。こういったこともテーマ性が見え難くなる一因と思える。
オピニオンリーダーの話に戻って、角川会長の話などは何年もずっとブレていないし、実際に自分の会社で実践もしているので、本気であって、しかも成果を出していることも、また将来に手を打っていることも判るが、未だにその指向が業界を引っ張っているとは見えず、むしろ異端児扱いのままかもしれないと思うほどだ。もし出版業界のオピニオンリーダー達が角川路線などを啓蒙したくて、自分たちでこのようなイベントを起こすと、それなりの集客力も影響もあったであろう。実は日本の多くの「ギョーカイ」ではアメリカにおける何々協会と同じように、共同でビジョンの実現のために皆で協力し合うことを行ってきたのだが、出版業界はそうなっていないと感じた。
記事『水面下のeBook』では巨大市場を形成しているサブカル系が抜け落ちているとも書いたが、技術面でも重要なものがこのイベントには落ちていて、EPUBとかHTML5のセッションは皆無になってしまったし、展示でも私の付き合いのある業者さんは殆ど出展していない。イースト、セルシス、アクセスも出なくなった。一昨年は自主出版がトレンドで、昨年は流通・配信がトレンドだったが、今年は何だったのだろうか?思いつかない。強いて言えばやはりネットの時代にふさわしい仕掛けを考える人はいるものだなあと思うような新顔で面白いベンチャーがごく一部出てくるので、それらを知るのにこのイベントの価値があると言ってもよい。それらはおそらく一般の参加者は気が付かないだろう。
私は制作管理や配信技術に興味があって見て回ったが、新規の展示として目だったのは3Dやビデオで、やはり出版技術にフォーカスするどころか、発散しているように見える。それも求心力をもったギョーカイ運動とかリーダーシップが日本の出版界にはないからだろう。