投稿日: Jun 09, 2015 1:0:41 AM
電車の中でも電子書籍を見ている人はいるものの、電子雑誌という分野はなかなか立ち上がってこない。雑誌を出すには広告主になってもらいたいところに媒体企画を持ち込んで、年間の広告予算をとりつけてもらったりするが、今の時世では雑誌広告というと予算はつかない。だからいくら読者視点で面白そうな電子雑誌を考え付いたとしても、ビジネスとしては離陸し難い。従来の紙媒体のスペース売りとは異なる広告モデルを考えてクライアントに納得してもらわなければ、新しい電子雑誌は産まれないだろうと言われている。
Webの広告も大ポータルサイトの目立つ場所とか、個人Blogのアフィリエイトとか、極端に大きいか小さい広告に寄ってしまって、バナーのようなもので媒体の経営ができるようにはならなかった。Web上には活かされない広告スペースがいっぱいあったが、それらはヤフオクや楽天にかっさらわれようとしていて、広告の主戦場はスマホに移ってしまった。しかしスマホ広告は何かと制限があるので自由度が低く、そこから広告ベースの媒体は産まれるのだろうかと疑問に思う。
唯一軌道に乗っているのはスマホによる既存の紙の雑誌の読み放題サービスで、ソフトバンク傘下の「ビューン」やKDDIの「ブックパス」など数百円程度のサービスが何十万単位の会員をもっていたが、中でもNTTドコモの「dマガジン」が200万会員ほどに成長している。これらは電子版であるからといって特別の編集をしていないもので、出版社からすると費用や手間をかけずに幾らかの固定収入が見込めるものなのだろう。
私はキャリア3社の雑誌読み放題サービスを比較したことはないので、どうしてNTTドコモが伸びたのかが分からないのだが、有名雑誌であるとするとコンテンツに大きな差がないわけだし、キャンペーンの仕方の差ではないかと思う。このままではあまりにも紙の雑誌の世界のままで、どれだけ沢山雑誌を揃えても、見る方は習慣づけられたものだけ見て、興味がないものは読まれないだろう。
Webではリコメンドがあるように、雑誌も「この記事を読んだ人は、こんな雑誌の記事も読んでいます」というようなことになると、紙の雑誌よりは世界が広がるのだろうが、さてその開発投資を誰がするかである。当然雑誌社にはその能力はないし、キャリアも今から金をかけるだろうか? もしそういう試みをするなら、むしろ最初から検索可能なように個々の電子雑誌のオーサリングをEPUBなりHTML5なりに変えてしまった方がよいだろう。そこに広告モデルも最初から組み込んでおいて、各誌が独自で広告営業をするのではなく、読まれた度合いによって広告収入の配分を受けるようなものになるのではないか。
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