快感ストーム(12)Fin

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 競技を終えた統和と亜里沙は、抱き合ったまま回転ベッドに寝そべっていた。採点が終わるまですこし時間がある。後戯の時間にちょうどいい。

 亜里沙がうっとりとした表情で統和に体をこすりつけてくる。統和は仰向けになって亜里沙を抱きながら、会場の様子をながめた。こんな場所だったんだな、と思う。天井は高く学校の体育館ほどもある。その高さから巨大なクラゲのようなシャンデリアがいくつもぶら下がっていた。鏡張りの広い廊下はどこまでもつづいている。

(世界で一番豪華な愛の巣だな)

 そう思いながら亜里沙にキスをすると、亜里沙が甘えた声を出した。

「統和、最高だった。いままでで一番ステキなセックスだった」

「亜里沙もステキだった。ペアを組みたい相手はきみだけだ。俺の気持ちはわかってくれたか?」

「もうあなたしか見えない。でも、思い切ったことを考えたね。レシーバーセックスなんて。しかも互いを感覚共有するなんて。うまく行ったからよかったものの、あとで紅林さんに大目玉だよ」

「セックスプレイヤーにはセックスプレイヤーのやり方がある。俺たちは心も体もひとつになれてお互いをわかりあえた。そうだろ? なあ、亜里沙。きみとはこれからもずっとペアを組んでいきたい。ベッドの上でもベッドの外でもだ。結婚してくれ」

 亜里沙は一瞬驚いた表情を見せ、すぐにおだやかな微笑みを浮かべた。そして統和をぎゅっと抱きしめてキスをすると、

「ベッドの外ではOK。あなたと結婚する。すごくうれしい。でも、ベッドの上では別の子とペアを組むことも考えて。メイちゃんは将来有望なプレイヤーだよ」

「どういう意味だ?」

「子供を産みたい。そうなったらしばらく活動休止しなくちゃいけないでしょ。その間、世界の三上は別の子と組むの。けれど、貸し出すだけ。わたしは絶対にトッププレイヤーに復帰してみせるから」

 統和はあきれたような顔で亜里沙にキスをした。

「欲張りな女だな。妻であり、母であり、女であり、プレイヤーとしてのキャリアも捨てない、か。女に特有のメンタリティだ。その点、男は何かを得るためには別の何かをあきらめなきゃならないことを知っている。ほかならぬ女がそれを求めるのだしな」

「わたしはあなたがほかの女の子とセックスするのを認めるよ?」

「わかっているさ。でも、心は永遠にきみのものだ」

 スコアが出た。オランダペアを上回るハイスコアで暫定一位。

 統和と亜里沙は鏡の間に隣接する王の寝室へと移動した。表彰台に上る上位3チームの控え室だ。暫定三位だったフランスペアが押し出される形で退出し、王妃の階段から一階へと降りていった。ノルウェーとオランダのペアが笑顔で迎え、お互いの健闘を称え合った。二人は用意されたソファに座って後戯のつづきを始めた。

「わたしたち、このまま金メダルを取れるかしら」

「いまとなってはそれほど大した問題じゃない。さっきの体験が失敗してメダルを取れずにきみがクビになったとしても、俺が妻として採用するつもりだったしな」

「コラ、結果を出すのも大切だよ」

「結果なら出ている。大丈夫、金メダルを取れるよ。誰も俺たちのところまでは届かないさ」

 アメリカペアの体験が始まっても二人は気にせずに後戯にひたった。アフリカ系のジョー・ジャクソンと北欧系のカミラ・ラーセンのペアは、先行するオランダと日本のペアの結果に動揺し、本来の持ち味を出しきれなかった。結果は四位。スポーツセックス初のオリンピックは終了、金メダルは日本が獲得した。

 全裸で競技を行ったセックスプレイヤーたちも、表彰式には公式ユニフォームを着て参加した。統和と亜里沙はベルサイユ宮殿前の広場に設けられた表彰台の上で金メダルを高く掲げた。昇り始めた陽の光を受けてメダルがきらめいた。二人は満面の笑顔で観衆に手を振った。

「統和、わたしたち、金メダルを取れた。最高の気分。だから本戦の前に言っていた、もう一つの言いたいことっていうのを聞かせてよ」

 期待の目を向ける亜里沙に統和は戸惑った。金メダルを手にプロポーズするつもりだったのだが、うっかり済ませてしまっていたからだ。

 まあいいか。ずっと言えなかった言葉だ。もう一度口にするのも悪くない。

「亜里沙、きみを愛してる。ずっと前から好きだった。結婚しよう」

 君が代が流れる中、統和と亜里沙は抱き合ってキスをし、愛し合うペアの絆を世界中に見せつけた。


おわり

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