第9話 とまどいロータープレイ (01)
メイド服姿でチラシを配るお姉さんたちを横目で見ながら、駅前の雑踏を抜けた。
あずきさんはいつもどおりのメイド服を着ている。わたしはフリルをたっぷりあしらった花柄のロリータドレスだ。お付きのメイドを連れたお嬢さま――のコスプレに見えるかもね。けれど、この街ではそれもアリだ。
「ここだよ」
あずきさんに連れてこられたのは、駅から徒歩一分と離れていないビルの前だった。八階建てくらいのそのビルを見上げると、窓のところにメイド服やらセーラー服やらがディスプレイされている。
「このビルの中がぜんぶアダルトショップなんですか?」
「そのとおり。大人のデパートなんだよ」
巨大なアダルトショップが駅前で堂々と営業しているというのが信じられなかった。
けさ、お父さんがもなかさんと車でパソコンの部品を買いに行くと言い出した。それを聞いたあずきさんが、わたしも連れて四人で出かけようと提案した。もなかさんの車は二人乗りのスポーツカーだから四人は無理だ。するとあずきさんが、自分の車はV型12気筒の4WDだから大丈夫だと自慢気に言った。ガレージに行ってみると、あずきさんの車も2ドアのスポーツカーだった。けれど、ステーションワゴンのように屋根が後ろまで延びていて、荷物を積めるようにハッチゲートがついている。大きな荷物もあるからそっちのほうが都合がいいなとお父さんも賛成して、みんなで出かけることになったのだ。
駐車場に車を入れたあと、お父さんともなかさんはパソコンショップへ行った。わたしはあずきさんの案内でアダルトショップにやってきた。
バイブレーターを買うためだ。
もちろん、お父さんともなかさんには内緒。
きのう、あずきさんのバイブでオナニーしているところを見つかってしまった。あずきさんは叱るどころか、わたしのためにバイブレーターを選んでくれるというのだ。
店内は狭いけど明るくて、とくにエロいお店という雰囲気はなかった。棚にはカラフルな小箱がならんでいる。しばらくながめてみて、そこがコンドーム売り場だと気づいた。
「こっちだよ、莉子ちゃん」
あずきさんにうながされて狭い階段を上がった。
二階の売り場にもアダルトグッズらしきものは置いてなかった。扱っているのはアニメグッズらしい。棚にならんでいるのはアニメキャラが描かれた小箱だ。サイズからしておそらくフィギュアだろう。この街には萌え系ショップも多いから、アダルトショップで美少女フィギュアを売っていてもおかしくない。
好きだったアニメのキャラを見つけて、箱を手にとってみた。ギターを持ったネコミミ女子高生のイラストが描かれている。よく見るとロゴが違うので正規品ではない。便乗パクリ商品だ。パッケージの写真には、グロテスクなチクワのようなものが写っていた。
「それは男の人がオナニーで使うものだよ。女の子用は三階」
あずきさんが小声で言った。
このチクワのようなものをどう使うのかはわからないけれど、どうやら思っていたようなアニメグッズではなく、女の子が手に取るようなものでもないというのはわかった。
三階は一見するとドラッグストアのような雰囲気だった。でも、棚にずらりとならんでいるのはバイブレーターだ。
「うわぁ、すごい」
女性客もいた。カップルで談笑しながらバイブレーターを選んでいる客もいる。あずきさんが言ったとおりだ。女の子がアダルトショップに入ることには抵抗があったんだけど、心配することはなかったみたい。
わたしは安心して商品を見てまわった。バイブレーターを見ると、きのうの快感を思い出してアソコが濡れてくるような気がする。
これも、これも、みんな試してみたい。
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