快感ストーム(06)

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 ドイツペアの体験が終わったあと、亜里沙が軽い食事をとって戻ってくると、タイのペアの体験が始まるところだった。統和とメイの姿は見えなかった。あの二人はどこかの仮設テントでセックスをしているのではないかと思うと、腹立たしさが沸き起こってきた。本戦前には禁欲しておくのがプレイヤーとしてのあるべき姿だろう。

 しかたなく、亜里沙はまた紅林コーチの隣に腰を下ろした。

『タイのチャッマニー選手とミント選手の前戯が始まりました。なかなか激しいですね。豊川さん、この二人はどちらも女性のように見えますが?』

『実はチャッマニー選手はシーメールで、性器は男性のものを持っているのですが、体のそれ以外の部位を女性化しているんです。女性的な外見ですが、男性としてのセックスは可能で射精もできるということです。一方、ミント選手は、この方も元は男性で、完全な性別適合手術を受けているんですね』

『ということは、どちらも生まれたときの性別は男性だったということですか?』

『そうです。資料によると、二人とも性自認は女性、そして性的指向は同性愛、つまり、この場合は女性が性愛の対象になるということですね。見た目は女性で、普段は女性として暮らしているそうです』

『これはちょっと複雑ですね』

『スポーツセックスのルールでは、あと付けではない男性器を持ち、射精が可能である場合に男性プレイヤーとして登録することができます。女性プレイヤーとなるためには、男性器を持たず、アナル以外に挿入できる女性器があればよい、ということになっているので、性転換した男性も女性として扱われます。もっとも、元男性は生まれながらの女性に比べて快感の得方という点でハンデを持っています。ミント選手は相当な努力をして女性的な快感を体得したようですね』

『スポーツセックスの世界は奥が深いですね』

『セックスそのものが奥が深いのです』

『前戯がつづいています。ミント選手のフェラチオ。ウッ……、これは……、ア……。あ、失礼しました。ミント選手、これはうまい。まさにとろけるようなフェラ。チャッマニー選手もうっとりとした表情』

『ミント選手も男のツボは自分でよくわかっていますから、これは強みです。男性の快感も女性の快感も知っているというのはトランスセクシャルならではですね』

『そうですね、ああッ、これはたまらない』

『まもなく挿入ですね。小林さん、このあたりで共有チャンネルをいったんミント選手に切り替えてみてください』

『ハ、ハイ……。おや、チャッマニーがコンドームをつけましたね。ミント選手が四つん這いになります。挿入はバックからのようです。さあ、挿入……、ウッ……、ああ……、これは……、アナルですッ。アナルに挿入……、ゆっくりとピストン……、うああ、これはスゴイ。これはまさに未体験ゾーン! わたしは男性なのですが、女性とのセックスに匹敵、いや、それを凌駕するほどの激しい快感を体験共有していますッ』

 タイペアはその後もアナル中心でプレイをつづけ、クライマックスでチャッマニーがコンドームをはずしてミントの膣内に射精した。

 紅林コーチは満足そうにレシーバーをはずして、ため息混じりに「よかったわァ」とつぶやいた。タイペアのスコアはドイツペアを上回っていた。それでも亜里沙と統和の実力の方がはるかに上だ。

 こうして予選下位のペアの体験が進んでいった。20分という制限時間は亜里沙が考えていたよりもセックスの組み立てを難しくしているようだった。どのペアも十分に快感を盛り上げることに苦労している様子だ。

 予選四位の中国ペアが鏡の間に入ってきたところで、メイが戻ってきた。

「中国の体験に間に合いましたね。紅林さん、メイの分のレシーバーもありますか?」

 メイは受け取ったレシーバーを頭にかぶりながら亜里沙の隣に座った。

「統和の様子はどう? いままで彼と一緒にいたんでしょ?」

 ややトゲのある口調で尋ねたが、メイは天真爛漫な笑顔で、

「三上さんは絶好調ですよ。いまはオーナーと話してます。すごいですよね。スポーツセックスの男性プレイヤーってすごくメンタルに影響されるじゃないですか。三上さんっていつも自信にあふれていてカッコいい。でも、自信過剰にはならなくて、冷静に自分を見つめる強さも持ってる。それに案外と女性に対して純情なところがあって、こういっては失礼なんですけど、カワイイですよね。三上さんのこと、大好きです、うふふ」

「統和もメイちゃんのことはいたく気に入っているみたいだしね」

 皮肉のつもりで言ったのだが、メイには通じなかった。

「三上さんもそう言ってました。メイのこと、本当の妹みたいに大事に思ってるって。きゃー、恥ずかしいです。メイも三上さんみたいなお兄ちゃんがほしかったから――」

「お、お兄ちゃん!?」

「そうですよ。メイは世界の三上統和に開発された妹分なんだって自慢してます。あ、須崎先輩のこともお姉さんみたいに思ってますよ。オリンピックが終わったらセックスしましょうよ。三上さんも入れて3Pにします?」

 なんだか気が抜けてしまい、亜里沙は吹き出した。

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