お兄ちゃんと不倫しました (06)Fin

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 あの夏、わたしとお兄ちゃんは文通してただけで、普通の家庭の兄妹みたいな家族の絆はなかった。だから、あんまり気持ちよくなれなかったんです。

 いまは違います。十五年近く、兄と妹として過ごしてきたんです。

 この感動的なセックスは、わたしとお兄ちゃんが本当の兄妹になれたんだっていう、何よりの証拠なんです。

 お兄ちゃんはゴムをしてなかったので、わたしのお腹に射精しました。

 ちょっぴりシーツに付いちゃった。ごめんね、恭子さん。えへへ。

 恭子さんとはご無沙汰なのか、かなり溜まっていたお兄ちゃんは、そのあと三回つづけてわたしとセックスしました。

 恭子さんのベッドには、お兄ちゃんとわたしが愛し合った跡がたっぷり染み込んでしまいました。

 シャワーを浴びて、ふたりでソファに座ってくつろいでいるときに、恭子さんと子供たちが帰ってきました。帰るのは夜だって言ってたのに、予定より早めに帰ってきたものだから、鉢合わせしてしまいました。

 エッチしてる最中じゃなくてよかった。とはいえ、もちろん恭子さんは怒り心頭です。

 これはどういうことかと、お兄ちゃんに詰め寄りました。

「恭子さんが実家に帰っちゃって、お兄ちゃんが粗末な食事をしてたから、わたしがご飯作りにきてあげただけ」

 わたしがお兄ちゃんを「お兄ちゃん」と呼ぶのが気に入らない恭子さんは、他人のくせにお兄ちゃん呼ばわりするなと文句を言いました。

「でも、本当に奈々はぼくの妹なんだ」

 お兄ちゃんがわたしを見て、「いい?」という顔をしたので、わたしは「いいよ」と目で答えました。これがまた恭子さんには気に入らなかったみたいですけど。

 お兄ちゃんは自分の机の引き出しから、一枚の書類を取り出して、恭子さんに見せました。DNA鑑定書です。わたしが大人になったときに、お兄ちゃんと相談して検査してもらいました。九十パーセント以上の確率でわたしがお兄ちゃんの妹だっていう証拠書類です。

 恭子さんは書類を手に取って子細に検分しましたが、何も言えない様子でした。

「わたしとお兄ちゃんは異母兄妹なんです。お父さんが認知してくれないので、いままで秘密にしてました。恭子さんには、いろいろ不快な思いをさせてしまって申し訳なかったです。ごめんなさい」

 そう言って頭を下げながらも、心の中では舌をペロッと出してました。

 わたしの生物学上の父親にはこの書類を見せていません。いまさらって感じですから。恭子さんにも秘密にするよう言い含めました。

 恭子さんはわたしのお兄ちゃんに対するこれまでの態度に納得したようです。ちょっと気に入らないのは、尻軽で育ちの悪そうな子だと思ってたけど妾の子だったのねああそうかなるほどそれなら納得だわ、なんて思ってるのを隠そうともしないところです。自分の方が女として上だと思ってるところが、ほんとに嫌な女です。

 でも、お兄ちゃんとわたしは不倫しちゃったもんね。ざまーみろ。

 夫が不倫するのは、たいてい奥さんの方に問題があるものです。不倫する男の人はけっきょくのところ癒しを求めてるんです。奥さんがちゃんとしてる家のご主人は、若いときのわたしだって落とせなかったですよ。高慢な恭子さんにはわかんないだろうけど。

 さて、こんな感じでわたしとお兄ちゃんは不倫関係になり、その関係はしばらくつづきました。年が明けて二回目の緊急事態宣言が出たあとも、お兄ちゃんとは月に三、四回はラブホテルで濃厚接触を繰り返しました。

 わたしたちが不倫関係を終わらせたのは、東京に三回目の緊急事態宣言が出たあとのことです。たぶん兄と妹としての愛情を十分に確かめ合ったから、満足できたんだと思います。わたしたちは恋愛関係にあったわけじゃないですからね。

 お兄ちゃんと妹としての絆。

 これからもずっと、お兄ちゃんは大切な人です。

 それから二ヶ月近く経つわけですが――。

 マッチングアプリでパパ活を始めました。最初はデートするだけだったんですけど、こないだ素敵なおじさまと朝いちラブホしちゃいました。人妻援交です。なんだか高校生のときに戻った気分。不倫の恋もまたしたいな。職場不倫のスリルをまた味わいたいです。こんどはW不倫だからワクワクする。でも、いまは難しいかな。コロナ禍が早く終わればいいのにと思います。というわけで、

 旦那さん一筋になるつもりだったのに、お兄ちゃんのせいでダメになっちゃいました。

おわり

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